――NTT東日本は2012年度の事業計画で、「NGN(次世代ネットワーク)を活用した新しいサービス・商品の提供」「ブロードバンド・ユビキタス環境の充実と光サービスの利用層拡大」と、光の利活用を強く打ち出していますね。
小園 私たちはこれまで、一貫して光とNGNを推進し高速ネットワーク網を全国に構築してきました。これを徹底的に活用することが現在の課題です。
「フレッツ光」の加入数を年々増大させ続けることは難しくなっていますが、私たちは通信事業者ですから、その利活用を活発化し、ネットワーク収入を下げ止まらせなくてはなりません。私の担当している法人分野は、一時期ネットワーク収入が劇的に減少しましたが、下げ止まってきています。この間、ネットワーク収入を上げることに寄与する様々なソリューションの開発をやってきました。
中小企業攻略のカギは「型紙」と「クラウド」
――NTT東日本の法人事業は、ここ数年、組織改革も含めて事業戦略を大きく見直していますね。
小園 グローバルな展開をする超大手企業1500社は2009年にNTTコミュニケーションズに委託しました。それ以外の約1万社の大企業はNTT東日本のビジネス&オフィス事業推進本部が担当し、約35万社の中堅中小企業は各県域のビジネス営業部と営業部オフィス営業部門が担当するように変更しました。
2009年7月に発足したビジネス&オフィス事業推進本部は、大企業を担当してきたビジネスユーザ事業推進本部と中堅中小向けビジネスを担ってきたコンシューマー事業推進本部オフィス営業推進部を統合したものです。両者のノウハウを共有し、ネットワーク収入の拡大と新領域での収益確保が目的でした。
さらに、2010年7月には、ネットワーク営業とSI営業を統合し、「私はSIしかやりません、私はネットワークしかやりません」などという仕切りを外して、効率的に多くのお客様をカバーするようにしました。
12月には、飯田橋と品川に分かれていた拠点も統合しています。ロケーションだけでなく、これを機に、同一分野の営業とSEを同一フロアに配置して、両者の連携強化を図りました。ネットワークをカバーするSI営業にしていこうという考えです。
――業種ごとに、営業とSEが連携しながらより深く顧客を開拓していこうというわけですね。
小園 その通りです。業種に関しても、重要分野を絞り込んで効率化しました。特に自治体、医療、教育・大学、警察・消防、防災の5つを重点分野と位置づけています。
――この重点分野では、どのような取り組みをしていますか。
小園 たとえば自治体とか医療でソリューションを1つの「型紙」としてまとめ上げ、クラウドなどを活用してそれを横展開していけば、今までSIに数億円掛かっていたものが、月額数万円で利用していただくことが可能になります。そうしたソリューションを広げていくことです。
汎用性の高い型紙を作り、多くの顧客を獲得し、利益を上げる。そういうビジネスモデルになります。顧客数を増やし、長く使っていただくことによって利益を稼ぐことができるのです。そこでは、NTT東日本の地方支店が多数あるということが強みになると考えています。
――クラウドへの取り組みも不可欠になりますね。
小園 もちろんです。昨年度は、需要の伸びが期待されるクラウドビジネスへの対応のため、ソリューションエンジニアリング部の中にクラウドサービス開発を担当する新しい組織を設立しました。
また、社外のSIerとの連携強化にも取り組んでいます。ネットワークソリューション部に社外事業者と連携する組織を新設しました。ネットワーク収入を増やすために、自前の営業だけでなく、SIerに我々の商材を売っていただこうという狙いです。成果はこれから現れると思っています。
個別SIからクラウドサービス中心へと事業をシフトしながら増収を実現するのは、大変な挑戦だと考えています。
NGNは認証・課金・回収ができる信頼性の高いネットワークです。これを基盤にしたサービスプラットフォームで、映像配信、介護・ヘルスケア、遠隔医療、テレワーク、映像コミュニケーションなどのアプリケーション/コンテンツを提供することができます。たとえば、ベンチャー企業も早期に全国サービスを提供できるようになります。