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“帝国主義”が加速する情報通信
AIが持つ潜在的な可能性が一般社会においても注目されて久しい。AIに関するサービス・技術開発や投資動向は依然として産業界における主要なビジネストピックスとして位置づけられており、日々紙面を賑わせている。本稿では、AIを取り巻く競争環境や主要プレーヤーの事業戦略を読み解くとともに、AIに関する通信業界としての本質的な意味合いや今後の価値の出しどころについて考察する。
まず大前提としてAIを含めた情報通信の世界は、GAFAMに代表されるグローバル巨大資本が展開する“帝国主義”の世界観に完全に支配された状況にある点を踏まえなければならない。過去30年で情報通信の世界は急速に進化し、ビジネスやサービスの質的発展や量的拡大がなされてきたが、その牽引役はグローバルレベルで影響力を保持する限られたプレーヤーによるものである。
Googleが25年、Amazonが30年、Microsoftが来年で創業50年を迎える中、本来技術革新の波が激しいWebやITの世界でこれらの巨頭と呼ばれるプレーヤーの顔ぶれは変わっていない。一方、様々な分野で数多くのベンチャー企業が勃興していることを勘案すると、この分野の事業構造は極めて“保守的”であり、プレーヤー間の力学や勝者の法則などが完全に定着化した“帝国主義”の世界であると考えられる。“帝国主義”の世界で競争優位を確立させるための普遍的な原理は、確固たる外交戦略(≒経営戦略)を推進するために、産業振興(≒事業)と軍事力(≒技術力)を高度にバランスさせることである。この点に優れたGAFAMに代表されるプレーヤーがAIの世界でも依然としてリーダーシップを握り続けているのは当然の帰結といえる。