EMCジャパンは2012年4月4日、ネットワーク機器の構成管理ソリューション「EMC IT Operations Inteligence Network Configuration Manager(以下、NCM)」の販売を開始した。
「ストレージベンダーのEMCが、なぜネットワーク機器の管理ツールを?」と疑問に思う向きもあろうが、ご存知の通り傘下にヴイエムウェアを擁するEMCはクラウドにおける最重要キープレイヤーの1社である。
「クラウドや仮想環境のトータルの運用管理をどうしていくのか。サイロ型で管理する時代は終わり、ドメイン全体で管理していく必要がある。ストレージは我々がやるが、そのほかは他社にお願いしますというわけにはいかない」と、同社プロダクト・ソリューション統括部 統括部長の永長純氏はネットワーク機器の管理ソリューションを提供する理由を説明した。
また、同EMC ITOI担当シニアテクノロジーコンサルタントの毛利洋一郎氏も「クラウドという方向性に行ったときに、ネットワークというのは外せない。ネットワークの上にすべてが載っている」と話した。
EMCが目指すクラウド管理基盤の全体像 |
従来「33時間」が「12分」に短縮
NCMは、ネットワーク機器構成の自動取得、構成変更のバージョン管理、エラーチェック、ポリシーベースのコンプライアンスチェック、脆弱性レポートなどの機能を備えているが、永長氏によると大きく3つの特徴があるという。
NCMの3大特徴 |
1つは、「ネットワークの運用管理負荷を平均で95%以上、削減できる」ことだ。例えばTelnetにより1台1台設定するのと比べて、従来33時間かかっていたパスワード変更は12分に、従来45時間のQoS設定は120分に短縮できるとした。
毛利氏は以前、外資系証券会社でネットワーク運用を担当していたそうだが、そのときの経験では約120台のスイッチ、約70台のルーターのパスワードを変更するのに、約2週間の時間と約200万円の費用がかかったそうだ。「昼間にネットワークを止めるわけにはいかないので、作業は夜にしかできないが、1日10~20台が精一杯」
一方、NCMの場合、手作業ではなくバッチ処理のため、大量のネットワーク機器の設定変更を効率的に行えるという。また、毛利氏は「ITの問題の85%は起因しているといわれている」と紹介したうえで、バッチ処理なので「手作業で起こりやすい人為ミスを削減できる」とアピール。さらに、ネットワーク機器構成のバージョン管理機能により、変更履歴を調査したり、変更前の状態に戻すこともすぐにできる。
EMCジャパン グローバル・サービス統括本部 テクニカル・コンサルティング本部 プロダクト・ソリューション統括部 EMC ITOI担当シニアテクノロジーコンサルタント 毛利洋一郎氏 |
2つめの特徴は、コンプライアンスツールの提供によるセキュリティ強化である。NCMでは、ネットワークが社内のポリシーや業界標準のガイドラインに適合しているかをレポートする機能を搭載。例えば、NCMの標準機能として提供される「PCI Advisor」により、クレジット業界のセキュリティ基準であるPCI DSSに準拠しているかをレポートできる。また、有償オプションの「NCM Network Advisor」を追加すると、脆弱性の検知と対処の自動化のほか、各種ソースからEMCが収集したネットワーク機器の脆弱性レポートと販売・サポート終了製品情報が提供される。
最後の3つめの特徴となるのは、EMCのネットワーク監視ツール「ITOps」との連携である。運用管理と監視の統合ビューを提供。また、管理対象のネットワーク機器構成やログイン情報の自動同期ができるほか、監視ツールからのアラートをトリガーにNCM側で自動で構成回復を行うことなどもできる。
海外でのNCMの導入事例 |
NCMの価格はネットワーク機器50台の構成管理を行う場合で150万円~(税別)。EMCジャパンではまずは直販をメインに、大手通信事業者と金融をターゲットに提案活動を行っていくという。