6Gの具体像はいつ頃見えてくるのか。「2025年のRelease 20(以下、Rel.20)からではないか」というのが大方の見方だ。3GPPでは現在、「5G-Advanced」の標準化を行うRel.19が始まっており、Rel.20は2025年夏頃の開始が予定されている。
6Gは、今後議論される新たなコンセプトをベースに作られる次世代システムだが、5Gとその拡張版である5G-Advancedのベースの上に作られるものでもある。技術開発の観点でも、通信事業者のインフラ整備やビジネス開発の観点でも、「5Gの方向性をしっかり実現していくことが6Gにつながる」とクアルコムジャパン 標準化本部長の城田雅一氏は強調する。
エリクソン・ジャパン CTOの鹿島毅氏も「5Gの基盤の上に6Gが乗るという前提は、従来世代と変わらない」と念を押す。例えば、5Gの目玉技術の1つであるMassive MIMOも、4G時代に導入の議論が始まった。5Gのエンハンスメントにあるものをベースに6Gが作られる」(同氏)。
では、5G-Advancedからは6Gのどんな萌芽が見えてくるのか。Rel.19の重点ポイントから見ていこう。
浸透し始めたAI/ML
3GPP標準化のスケジュールを整理しておくと、昨年完了したRel.18から19、20までが5G-Advancedとなる。
その仕様策定と並行して、Rel.20では6Gの技術検討がスタートする予定だ。ただし、それは規格化作業(Work Item)の前段として行われる調査・検討を行うフェーズ(Study Item)の位置づけになる。それを経て、検討に足るとされた技術要素をRel.21で仕様化。これで「最初の6G仕様」が作られることになる。Rel.21は2027年に開始、2028年の完了が見込まれている。
さて、Rel.18/19で議論されている5Gの機能拡張の内容は、鹿島氏によれば次の4つに大きく整理できるという。「パフォーマンスの改善」「新マーケットセグメント」「サステナビリティ」「インテリジェント」だ。
このうちすべてに関連してくるのがAI/機械学習(ML)技術の導入だ。
特にRel.19では、無線インターフェースへのAI/ML適用が議論されているという。エヌビディア デベロッパーリレーションズマネージャーの野田真氏によれば、ユーザーの動きを予測してビームを制御する「ビームフォーミングのマネジメントなどにAIを活用する」といったことが検討されている。
そのほかハンドオーバーのチューニングの最適化など、RANのパフォーマンス・品質改善に向けて様々なかたちでAI/MLの導入が進みそうだ。「多様なユースケース/デバイスをサポートするために、ネットワークそのものが複雑になっている。AIはそれを打破する有効なツールになる」(同氏)