大規模ホテルも外部委託
さて、企業は最新のWi-Fiソリューションをどう活かしているのか。
2024年2月に開業する宿泊施設「東京豊洲 万葉倶楽部」は、Wi-FiネットワークをティーピーリンクジャパンのWi-Fiソリューション「TP-LinkOmada」で整備した。
TP-Link Omadaは、AP、スイッチなどの機器と、クラウド管理ツールの総称だ。対応のハードウェアコントローラーを購入すれば利用料なしでクラウド管理ツールを利用でき、オンプレミスのソフトウェアコントローラーとの併用も可能。同施設ではこの併用構成でAP197台を管理し、管理自体はSIerに外部委託している。
Omadaの管理ツールは、ダッシュボードでネットワークの使用状況や異常時の警告、ログデータを閲覧できるなど、無料ながら強力な可視化機能を持つ。障害発生時、SIerはダッシュボードの情報に基づいて対応し、必要に応じて施設側にケーブルの抜き差しなどの作業指示を行う。これだけでほとんどのトラブルには即日対処できるという。
「ホテルWi-Fiは快適なのが当たり前。遅いとクレームにつながる」とティーピーリンクジャパン B2Bビジネスデベロップメント マネージャーの一ノ瀬泰治氏は話す。安定した通信を絶え間なく提供し続けるためにクラウド管理が役立っているが、この管理体制により従業員は本来業務に専念することができるといえよう。同施設ではタブレットやIPトランシーバーなど、業務にWi-Fiをフル活用するという。快適なネットワークが、国内外から訪れる利用客への“おもてなし”もDX化する。
小規模事業者でもプロの運用
病院の待合室や美容室・カフェなどでの来客用のWi-Fi提供は今や一般的だ。比較的規模の小さい工場などの現場でもタブレット端末とWi-Fiを活用し、在庫管理や生産管理のDXを行うなどの取り組みが増えている。
しかし、こうした企業には中小規模の事業者が多く、人手不足はさらに深刻だ。ネットワーク担当者が他の業務を兼務することも多い。
さらに「従業員規模が50人未満の小規模事業者では、家庭用Wi-Fi機器の利用層が約6~7割程度はいるとみている」と、NTT東日本 ビジネス開発本部 無線&IoTビジネス部 WiFi/LAN企画担当 担当課長の柴田梨理氏は述べる。「そうしたユーザーはキャリア回線に付属したWi-Fi機能付きのホームゲートウェイや、量販店やネット通販で購入した安価なルーターを使用しているケースが多く、大半が充実した機能・サポートよりも価格を最重要視する傾向がある」
NTT東日本 ビジネス開発本部 無線&IoTビジネス部 WiFi/LAN企画担当 担当課長 柴田梨理氏
そこでNTT東日本は、中小規模の事業者に向けマネージドWi-Fiサービス「ギガらくWi-Fi」を提供している(図表3)。業務グレードのAPをルーター等に「つなぐだけ」で導入が可能。ユーザーによる設定作業なしで、セキュアかつ安定したWi-Fiの利用を始めることができる。接続端末を可視化するダッシュボードを標準提供し、端末認証やアプリケーション単位での接続制限などのセキュリティ設定はサポートセンターが代行し、悪意ある第三者による設定変更を防ぐ。「導入から運用までプロがサポートする点が評価を受けている」と柴田氏。初期設定やトラブル対応を“おまかせ”できるうえ、年中無休の9時から21時の電話サポートも追加費用なく提供しているので、IT担当者確保が難しい事業者にうってつけのサービスだ。
図表3 NTT東日本「ギガらくWi-Fi」の主なサポート・機能
ギガらくWi-Fiの長所は、明朗かつ安価な価格体系にもある(図表4)。導入の初期費用は不要で、Wi-Fi 6対応の「ハイエンド6プラン」でもAP1台あたりの月額費用は4180円(税込)であり、コストを理由にして業務用Wi-Fiの導入を躊躇していた事業者の背中を押す(インターネット回線費用は含まず)。またハイエンド6プランでは100台、ライトプランでも30台の同時接続に対応するので、店舗でのフリーWi-Fi等にも安定して利用できる。
図表4 NTT東日本「ギガらくWi-Fi」プラン比較表
またNTT東日本では、ギガらくWi-Fiのサポート経験を活かし、マネージドのLAN環境を提供する「おまかせITマネージャー」を2023年6月に開始した。ユーザーの業務に合わせたLAN環境の設計・構築を行う「おまかせLAN構築」と、ネットワーク機器のリモート監視代行とトラブル予兆検知・プロアクティブな改善提案を行う「おまかせ監視サポート」を提供。小規模事業者でもネットワーク運用を手軽にアウトソーシングできるため、業種を問わず導入が進んでいるという。
効率的なネットワーク運用をいかに実現するか。その選択が、企業の未来を作ると言っても過言ではない。