ソニックウォールの日本戦略「次世代ファイアウォールで攻勢、大企業市場で40%成長へ」

UTM(統合脅威管理)アプライアンスベンダーのソニックウォール。従来、SMB市場で強さを発揮していたが、海外ではエンタープライズ向けでも成功を収めている。その要因や次世代ファイアウォールの動向、日本市場戦略などをソニックウォール 日本代表のリチャード・ティン氏に聞いた。


――初めにソニックウォールについて簡単に紹介していただけますか。

ティン 1991年に設立された当社は米カリフォルニア州サンノゼに本社を置き、社員数は約890名。そのうち330名がR&D部門に属しているのが大きな特徴です。現在サンノゼとシアトル、上海、インドのバンガロールの4カ所で研究開発を行っています。

ソニックウォールというとUTMのイメージが強いかと思いますが、実際、日本での売上の7割がUTMで、残り3割はSSL-VPNとEメールセキュリティとなっています。

――ソニックウォールのUTMにはどのような特徴がありますか。

ティン 我々は、調査会社のガートナーからフォーティネットと並ぶUTM市場のリーダーと評価されていますが、技術的には次の3つの特徴があります。

まずは、ソニックウォールの特許でもあるRFDPI(Reassembly-Free Deep Packet Inspection)です。他社のUTMの場合、パケットに分解されたファイルをいったん再構築してから、ウィルスやワーム、スパイウェア、フィッシングなどの脅威が含まれていないかどうかを検査します。一方、RFDPIでは再構築の必要なしに、パケットの状態のままスキャンするため、スループットを低下させることなく非常に高速にディープパケットインスペクション(DPI)を実行できます。

「ファイルをバラバラの状態で検査することで、ウィルスの検知率が落ちるといった弊害は起こらないのか?」などとよく聞かれますが、そのようなことは全くありません。

2つめの特徴は、マルチコアアーキテクチャです。UTMではアンチウィルスやIPSなど多くの機能を1台で統合的に提供できますが、一方で課題となるのは複数の機能を同時に利用したときのパフォーマンスです。しかし、ソニックウォールのUTMの場合、マルチコアにより各機能をパラレルに処理できますから、パフォーマンスは劣化しません。小規模オフィス向けのTZシリーズは1コアのモデルのみですが、中~小規模向けのNSAシリーズは最大8コア、大規模向けのE-Class NASシリーズは最大16コア、そしてハイエンド向けのSuperMassive E10000シリーズでは最大96コアまで搭載できます。

最後は、ソニックウォールリサーチラボの存在です。RFDPIのような独自技術を実現するには、様々な脅威を判別するシグネチャ(定義ファイル)も独自に作る必要があります。米国とロシアにあるリサーチラボでは24時間365日、新しいウィルスなどの監視とそれに対応するシグネチャの作成を行っており、できたシグネチャは1時間毎にUTMアプライアンスへ配信されます。

SMB出身ゆえの強み

――ソニックウォールはこれまでSMB(中小企業)を主戦場としてきましたが、2011年9月の日本代表就任時、今後はエンタープライズ(大企業)市場にも注力する方針を発表されました。

ティン 昔からソニックウォールはSMB市場でNo.1のシェアを獲得してきましたが、次のステップとして、今はエンタープライズ市場にもフォーカスしています。以前はエンタープライズに導入といっても、ブランチオフィスでの採用が中心でした。しかし、SuperMassiveやE-Classのような大規模ネットワーク向けの製品が充実してきたことで、本社レベルでの採用も多くなってきています。売上に占めるエンタープライズの比率は2年前にはグローバルで5%ほどに過ぎませんでしたが、現在では約20%に拡大しています。

当社は直近の四半期で過去最高の売上の伸びを記録しましたが、その最大の牽引役となったのも、エンタープライズ市場での好調です。2012年以降、売上に占めるエンタープライズの比率は35~40%以上になると予想しています。

――グローバルでの成功を受け、日本でもいよいよ本格的にエンタープライズ市場への挑戦を始めるわけですね。SMB市場での実績や経験は、エンタープライズ市場でどのように活きていますか。

ティン 一番の強みは、導入・設定の容易さだと考えています。エンタープライズの場合は必ずSIerがいますから、仮にトラブルが発生しても、SIerが何とか解決してくれます。しかし、SMBではそのような甘えは許されません。また、RFDPIやマルチコアアーキテクチャにしても、コストなど多くの点で制約があるSMB向けで最高のパフォーマンスを追求してきたからこそ、生み出せた技術だといえます。

月刊テレコミュニケーション2011年11月号から再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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