ディープフェイクの悪用が加速する?
インフルエンスオペレーションは、敵対国家に対しフェイクニュースやディスインフォメーションと呼ばれる虚偽情報を拡散したり、機密情報をリースするなどして混乱と不信館を増幅させ、個人や国家の意思決定への干渉を狙うものだ。
例えば2020年の米国大統領選挙の際、フェイクニュースの拡散が大きな脅威となり、FBIとCISA(サイバーセキュリティ・社会基盤安全保障庁)が共同で注意喚起を発出する事態となった。
また、偽情報を拡散する手法として、生成AIを使ったディープフェイクが利用されている。日本でも、2022年の台風15号による水害と称し、生成AIで作成されたフェイク画像が「X」上で拡散されたり、岸田文雄首相が卑わいな言葉を発しているような動画が投稿されるといった事例がある。
最近は、3秒のサンプル音声があれば、その人物の声で自由に話ができるAI音声生成ソフトウェアが公開されており、「ITスキルのない一般人でも簡単に作成できることから、ディープフェイクの悪用が加速するのではないか」と岡本氏は懸念を示した。
ディープフェイクの悪用が懸念されるという
トレンドマイクロでは、ソーシャルメディアアカウントを自動作成するツール「Kopeechka」も発見している。このツールを用いることで、インスタグラムやフェイスブックなどのアカウントを大量に作成することができ、偽情報を効果的に拡散させることが可能だという。
いち組織だけでリスク回避は不可能
世界情勢が不安定化する中で、日本がサイバー攻撃のターゲットとされる機会も増えている。
直近では2023年10月、国連安全保障理事会において、イスラエル・パレスチナ情勢に関するロシアの決議を日本が否決したことで、ハクティビストが日本を標的にすると宣言。実際にWebサイトが改ざんされるなどの被害が生まれている。
日本もハクティビストの標的に
このように安全保障に影響を及ぼすサイバー脅威に対し、どう立ち向かうべきなのか。
岡本氏は「取引先や子会社などが踏み台となるサプライチェーンリスクもあり、いち組織だけの対策ですべてのリスクを回避することは困難になっている」と指摘。そのうえで、被害を受けた企業などが、業界全体あるいはサプライチェーン全体で情報共有することが重要だと述べた。