F5ネットワークスジャパンは2011年8月25日、ロードバランサー/アプリケーションデリバリーコントローラ(ADC)の最新バージョンとなる「BIG-IP version11」を発表した。F5本社でバイスプレジデントを務めるエリック・ギーサ氏は「革命」という言葉を用いたが、2年以上の開発期間をかけたv11はBIG-IPにとって非常に画期的なバージョンアップになっているという。
記者会見ではまず、今年7月に日本法人社長に就任したアリイ・ヒロシ氏が、F5のビジネスの近況などについて説明した。同社の2010年度の売上は8億8200万ドルで、前年度比35%増加した。2011年度も「非常に順調」とのことで、第3四半期の売上は前年同期比26.1%アップ。2011年度は、「今の予定では10億ドルぐらいの売上を達成できる」という。
F5ネットワークスのビジネスの近況。売上は非常に順調に拡大しているという |
また、国内のレイヤ4-7スイッチ市場におけるシェアは44.1%と、7年連続でシェア1位であることを紹介。さらに、現在85名の日本法人の従業員数を「今年12月には100名ぐらい」に増員するなどし、日本での事業を今後いっそう強化していく考えを示した。「今後2年間で(日本での)売上を2倍にしたい」という。
国内のロードバランサ/ADC市場でも7年連続シェア1位、4年連続でシェア40%超というリーダーの座を長年維持するF5。アリイ社長は「さらにマーケットシェアを拡大していく」と意気込んだ |
アプリケーションに最適化したネットワーク設定が100倍迅速に
続いて登壇したのはエリック・ギーサ氏。前述の通り、同氏はBIG-IP v11を「革命」と表現したが、「軽い気持ちで“革命”という言葉を使っているわけではない。ダイナミックなデータセンターへと向かううえで、BIG-IP v11は重要なマイルストーンになると考えている」と語った。
F5ネットワークス プロダクトマネジメント&プロダクトマーケティング担当バイスプレジデント エリック・ギーサ氏 |
なぜBIG-IP v11は「革命」なのか――。その背景には、データセンターにおいて、ネットワークがボトルネックになっている現状があるという。ギーサ氏は「従来、データセンターのアーキテクチャは非常にシンプルなものだったが、現在はモバイルユーザーの増加、Web2.0に代表されるアプリケーションの変化など、データセンターは非常に複雑化している」と指摘。そのうえで、「様々なベンダーが仮想化にフォーカスしてきたが、仮想化イコール“ダイナミックデータセンター”といえるわけではない」と語った。なぜなら、仮想化によりサーバーやアプリケーションの柔軟性や俊敏性は向上したが、その一方で「ネットワークのプロビジョニングには数時間から数日かかる」ためだ。このような現状を受けて、CIOのプライオリティもここ1年間で大きく変化しており、2010年には8位だった「柔軟なインフラの構築と管理」が2011年には1位に急上昇しているという。
CIOのプライオリティを調査すると、この1年で「柔軟なインフラの構築と管理」が急上昇しているという |
それではBIG-IP v11では、何が新たに可能になったのか。1番目はアプリケーションの迅速なプロビジョニングを実現する「iApps」の搭載である。
iAppsは、アプリケーションにベストなBIG-IPの設定を簡単に行えるようにするための機能だ。シニアソリューションマーケティングマネージャの帆士敏博氏によれば、従来、BIG-IPの設定を個々のアプリケーションに最適化させるのは非常に難しい作業だったという。「先日、社内の優秀なエンジニアがデモのため、XenAppに合わせたBIG-IPの設定を行ったが、まずXen Appがどういう通信をするのかを調べるのに3日、そしてBIG-IPの設定をするのに2日と、BIG-IPに非常に精通したエンジニアでも5日かかった。しかも『これで本当に正しいか分からない』と話していた」。だが、iAppsにより、アプリケーションに合わせたBIG-IPの設定が「これまでの10~100倍に劇的に高速化」できるという。
iApps機能により、アプリケーションに最適化したBIG-IPの設定が誰でも迅速に行えるという |
iAppsでは、例えば想定されるユーザー数やSSLを利用するかどうか、インターネットからアクセスされるかなど、アプリケーション視点で要件を設定していくと、自動的にバックグラウンドでBIG-IPの設定をプロビジョニングしていくことができる。また、Microsoft Exchange、BEA WebLogic、Oracle Application Server、SAP、VMware VDIなど、約20の主要パッケージについては、設定をテンプレートとして提供する。さらに、8万人のエンジニアが参加するF5のオンラインコミュニティ「DevCentral」で、iAppsのテンプレートや技術情報などが共有可能になっており、その資産を活用することもできる。