社会医療法人石川記念会HITO病院(以下、HITO病院)、スマートゲート、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)は2023年7月14日、「医療現場におけるスマートグラスを活用した未来型看護実現の実証実験」を開始すると発表した。
実証実験のイメージ図
医療業界では急速に進む少子高齢化に伴い医療需要の増加やニーズの変化が進んでおり、医療従事者の労働力不足が大きな問題となっている。また、2024年4月からの「医師の時間外労働の上限規制」への対応もさることながら、看護師の負担増加も喫緊の課題だ。例えば認知症患者の徘徊による転倒、自らナースコールを呼べない重篤な患者の定期的な看護、複数のナースコールが鳴動した際の対応など、看護師の身体的・心理的な負担が増大している。また、HITO病院ではコミュニケーションツールとしてPHSやスマートフォンを利用しているが、使用時に手が塞がり患者ケアの際には利用できないという課題がある。
このような課題をふまえ病院DXを積極推進しているHITO病院、遠隔医療ニーズに柔軟に対応できるオンライン診療サービスを展開しているスマートゲート、および5Gなどの通信領域やICTトータルソリューションを提供するNTT Comの3社は、スマートグラスとオンライン診療システムを組み合わせた未来型看護の実現に向け、実証実験を行う。
スマートグラスを装着し看護する看護師(左)、ネットワークカメラの設置状況(右上)とスマートグラスから見える映像(右下)
実証実験では、HITO病院の看護病棟で以下の内容について検証する。
(1)スマートグラスを活用した患者の遠隔見守りによる看護師の負担軽減
病室に設置したネットワークカメラの映像をスマートグラス上に投影し病室の遠隔巡回をすることで、きめ細やかな見守りと医療安全性の確保、看護師の身体的・心理的負担を軽減できるか検証する。またIoTボタンを設置し、患者からスマートグラスへの呼び出しを行うことで患者と看護師の新たなコミュニケーション手段の在り方についても検証を行う。
(2)スマートグラスを活用した現場コミュニケーションの高度化
ネットワークカメラの映像やスマートグラス上の視点映像を医療従事者同士で共有し、ハンズフリーで映像・音声の双方向コミュニケーションを図ることで、介助の手を止めずに安全かつ正確なコミュニケーションができるか検証する。
(3)スマートグラスとオンライン診療システムの連携による新たな利活用シーンの検討
本実験は、スマートゲートのオンライン診療システム「スマートキュア」を用いており、院内での利用のみならず、在宅医療などにおいても活用可能。在宅医療における医療従事者の利便性向上について検証を行う。
実験の成果をふまえ、2023年度内を目途に3社間連携によりスマートグラスを活用した「未来型看護」のサービス化を検討し、医療従事者の労働環境の改善に取り組む。
また、AIの活用により転倒や容体変化の予兆検知など患者に寄り添う看護に貢献できるよう、システムの機能拡張に努める。
さらに、Tele看護(ICT技術による遠隔コミュニケーションを通じて提供される看護活動)の実現により人材が不足する地域においても適切な医療サービスを提供し、病気の早期発見と早期介入をすることで「治療」から「予防医療」へのパラダイムシフトの実現を目指すとしている。