<特集>動くIoTNTT Comが開発する「動くIoT」向け新機能 ネットワークエッジの進化支える

コネクテッドカーや自走ロボット等の普及には、動くIoT機器と連動して様々な処理を担うMECにも進化が求められる。docomo MECへの実装を目指して、NTT Comが開発している新機能とは。

MECをデータ連携のハブに

1つめは「広域分散メッセージキューイング機能」だ。広域移動中に通信状態が変化するのに対応し、さらに移動に追従してMECのデータを連携させる機能である。

クルマやドローン等の通信が途絶し、センター側からの指示が受け取れない際に、MECでそれをバッファリングして通信が復帰したタイミングでデータをやり取りする。

また、複数のMEC間でデータを連携させることで、例えばクルマが東京から大阪へ移動しても継続してデータを処理できるようにする。これにより、ドライバーやドローンの操作・運行管理者は通信の停止を意識せずに済む。デバイス側ではなくMECで移動を管理しデータを連携させることで、デバイスも含めたシステム全体で処理を最適化するのが狙いだ。

MECの配置については「将来的には都道府県ごとのレベルで設置され、サービスが提供されていくのではないか」と担当課長の舟越慎典氏は見る。日本のネットワーク環境なら東京と大阪の2カ所でも、自動運転や遠隔操作で要求される100ms程度の低遅延通信を全国で使えるが、MECをより細かく配置すべき理由もあるからだ。データの地産地消である。北海道のデータは東京では不要なものが多く、各地のMECに処理を分散させたほうがリソースの利用効率の観点から都合が良いという。なお、docomo MECは現在9拠点ある。

2つめは「ディスパッチャ機能」だ。動くIoT機器から送り出されるデータを、目的に応じて様々なサーバー/クラウドへ振り分けるハブの役割を担うための機能である。

例えば、クルマやドローンのカメラ映像はデバイス自体の監視や制御に使われるほか、周辺環境を把握して事故を予測したり、障害物を検知して周りに通知したり、あるいは道路のメンテナンスに役立てたりと様々な活用法が考えられる。用途ごとにデータを処理するクラウドは異なるため、その振り分けをMECで行う。

具体的には、デバイス側でデータにラベルを付与し、それによってMECでデータの宛先を変える。「新しいサービスができたり、システム更改で連携先のクラウドが変わったりしても、デバイス側の設定変更なしに運用が継続できる」(吉富氏)のがメリットだ。

3つめは「通信終端・認証機能」。証明書認証と通信暗号化によってIoTデータを保護する。ID/パスワード等を使った認証が難しいデバイスでも、一般的なITシステムと同等のセキュリティ対策が可能になる。インターネット経由でクラウドにデータを送る際の暗号化機能もMECに実装する。

ロボットの社会実装を後押し

これら3機能は、特定エリアでWi-Fiやローカル5Gに接続する建機や低速走行ロボット等に対しても、一部の機能を活用することが可能だ。

4月の道交法改正で、一定の条件下で自動配送ロボット等の公道走行が可能になった。遠隔監視と緊急停止の機能が必須となるが、「こうしたロボットの社会実装を推進するのに使える」と、スマートモビリティ推進室 主査の岡原昌之氏は語る。センター拠点から全国各地のロボットを遠隔監視・制御するのに使えるうえ、「プライバシー保護のために、ロボットのカメラに写り込んだ人が判別できないようにエッジで処理する」といった用途にも使える。

また、多数のロボットと人が協調して動ける社会を実現するために、MECを活用して、ロボットをより運用しやすくするプラットフォームを作る構想もある。担当課長の石野亮氏は、「ロボットメーカーは走行性や安全性に向けた機能改善に注力してくれている。私たちは公道走行のロボットオペレーションの点で協力し、動くIoT向けのMEC機能を進化させることで、ロボットを街ナカに普及させる一助になりたい」と、さらなる機能開発を進める考えだ。

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