「世界最大のモバイルアプリケーション企業になる」(SAPのジム・スナベ共同CEO)――。あらゆるITベンダーが今、モバイルへの取り組みを強化しているが、ERPやCRMなどビジネスアプリケーション市場におけるリーダーであるSAPも例外ではない。昨年には多くのモバイル向け製品を持つSybaseを58億ドルで買収した。
一体SAPはどのようなモバイルソリューションを提供しようとしているのか。7月13日に東京・恵比寿で開催されたイベント「SAP WORLD TOUR」で見えた同社のモバイルソリューションの具体像をレポートする。
SAPジャパンの阪尾素行氏(左)と井口和宏氏 |
SAPや他社システムと連携するモバイルアプリの開発が簡単に
SAPのモバイルソリューションは、大きく(1)Sybase Unwired Platform、(2)Afaria、(3)各種モバイルアプリケーションで構成されている。
SAPのモバイルソリューションの全体像 |
Sybase Unwired Platform(SUP)は、「既存IT資産を簡単にモバイルアプリ化する開発プラットフォーム」(SAPジャパンの阪尾素行氏)である。モバイル時代のアプリ開発で大きな課題となるのは、iPhone/iPadやAndroid、さらにはガラケーなど異なる複数のデバイスへの対応が必要なことだ。Windowsだけに対応していればよかったPCの時代とは違う。
しかしSUPの場合、フロント側のデバイスに関係なく、裏で一元的にバックエンドのSAPや他社システムを呼び出す作りのアプリ開発が可能。また、様々な種類のデバイスのネイティブソースコードを生成できるほか、HTML5ベースの共通アプリ開発にも対応するなど、「できるだけ同じソースを利用し、個別の開発を少なくする仕組みを備えている」(阪尾氏)という。
簡単にモバイルアプリが開発できるというSybase Unwired Platform(SUP)の特徴 |
2つめのAfariaは、いわゆるMDM(Mobile Device Management)ソリューションだ。資産管理やセキュリティポリシーの強制適用、アプリ配布、リモートロック/ワイプなど、企業がモバイルデバイスを運用するうえで必要な管理機能を提供する。
SAPのMDM「Afaria」の機能一覧 |
もちろんSAPはこうした企業がモバイルデバイスを活用するための基盤だけでなく、アプリもどんどんモバイル向けに提供していく考えだ。すでにBIやコラボレーションツールのモバイル版をリリースしているほか、同社のERPやHCM(人事管理システム)などをモバイルデバイスで利用するためのアプリのリリースを予定している。
SAPが提供中/提供予定のモバイルアプリケーション |