700MHz帯の新プラチナバンドは今秋割当 端末出力に制約、楽天には使いにくい?

700MHz帯の未使用帯域の携帯電話への割当の可能性を検討してきた総務省 新世代モバイル通信システム委員会 技術検討作業班 700MHz帯等移動通信システムアドホックグループが2023年4月18日の第5回会合で、委員会報告(案)を取りまとめた。

アドホックグループでは、楽天が要望しているプラチナバンドの再配分に向けたルールを提言した「携帯電話用周波数の再割当てに係わる円滑な移行に関するタスクフォース」の報告書で、「携帯電話用周波数の更なる確保に向けた検討を進めることが必要」と指摘されたことを受けて、NTTドコモから提案された700MHz帯の新帯域(3MHz幅×2)が本当に携帯電話で利用できるかが検討されてきた。

今回の報告(案)では、新帯域を携帯電話で利用できるとしながらも、特定ラジオマイク、地上デジタル放送との干渉を避けるため、基地局を緻密に配置して端末出力を抑制することを求めている。このため、新たに取得したプラチナバンドで広域エリアの構築を狙う楽天にとって、あまり使いやすい帯域にならない可能性もありそうだ。

700MHz帯狭帯域(3MHz幅)LTE(上り)と地上デジタルテレビ放送、特定ラジオマイクとの干渉検討(出典:700MHz帯等移動通信システムアドホックグループ 事務局提出資料)

700MHz帯狭帯域(3MHz幅)LTE(上り)と地上デジタルテレビ放送、特定ラジオマイクとの干渉検討
(出典:700MHz帯等移動通信システムアドホックグループ 事務局提出資料)

ドコモの提案は、日本では最小で5MHz幅までしか規定されていない4Gの運用帯域に、新たに3MHz幅の「狭帯域LTE-Advanced」を加え、700MHz帯の携帯電話用帯域と他のシステムとのガードバンド(干渉を避けるための緩衝帯域)に導入しようというもの。3MHz幅の4Gシステムは、現行の700MHz帯の携帯電話用帯域と他のシステムとの共用検討の前提とされた15MHz幅4Gシステムに比べ、目的帯域外に電波が広がりにくい。そこでガードバンドを一部削り、そこに3MHz幅4Gシステムを導入しても、既存システムへの影響が現在と同程度にとどまるという判断だ。

とはいえ、3MHz幅の4Gシステムが導入されると、携帯電話の上り帯域(端末の送信側)と地上デジタルテレビ放送帯域との間のガードバンドは8MHz幅から5MHz幅に、番組制作やコンサートなどで使われる特定ラジオマイクでは3MHz幅からわずか1MHz幅に縮減される。放送関係者などの間では、地デジや特定ラジオマイクの運用に支障がでるのではないかという懸念が強い。

実際、現行の700MHz帯携帯電話でも地上デジタル放送で受信ブースターを利用している場合などに、テレビの画面が乱れるケースがある。このため、700MHz帯利用推進協会が、対象となる設備に受信フィルターを取り付けるなどの対策を講じている。追加3MHz幅の新帯域では、これだけでは対応できないケースも想定されるという。

さらに特定ラジオマイク帯域では、影響を受ける可能性が高い上端の711~714MHzの3MHz幅は「ラジオマイクユーザーが全国で移動しながら使える貴重な帯域」であることから「現行と同等のラジオマイクの運用が担保できる」ことを共用条件とすることを求める意見が構成員(テレビ朝日)からあがっていた。

そこで報告(案)では、(割当を受けた事業者が)「追加3MHz幅システムの基地局の開設計画を策定する際において、狭帯域LTE-Advanced移動局の送信出力が大きくなり過ぎないようフェムトセル基地局を含む基地局を緻密に開設するエリア設計を行う」ことを共用条件として求めた。

さらに特定ラジオマイクに対しては、これに加えて「特定ラジオマイクの免許人等の関係者に対し、基地局の開設情報を事前に提供すること、特定ラジオマイクへの混信が生じた際等のために問い合わせ窓口を設けること」などを求めている。

4Gでは、基地局との通信状態が良好な端末について、基地局から送信出力を抑えるように制御して消費電力を抑え、長時間の電池駆動を可能にする仕組みが用いられている。

基地局を緻密に配置して端末の送信電力を下げ、地デジや特定ラジオマイクに対する干渉を回避しようというのである。

追加3GHz幅の免許を受けた通信事業者は、緻密な基地局設置により端末の送信出力を抑える必要がある(700MHz帯等移動通信システムアドホックグループ 事務局提出資料)

追加3GHz幅の免許を受けた通信事業者は、緻密な基地局設置により端末の送信出力を抑える必要がある
(700MHz帯等移動通信システムアドホックグループ 事務局提出資料)

報告(案)で示されたこうした周波数共用条件は、情報通信審議会への諮問・答申を受けて、総務省が策定する周波数割当方針に反映される。

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