<特集>Web3とメタバース【メタバースの現在地】黎明期はいつ終わる?「この1、2年で儲かるものにはならない」

期待が先行するメタバースとWeb3。大きな可能性を秘めているが、ここで足下を確認しておきたい。本格的な普及のためには何が必要か。識者とキープレイヤーに現在地を聞いた。

「メタバースもWeb3もまだまだ黎明期。この1、2年で儲かるものにはならない」。そう冷静に語るのは、野村総合研究所 DX基盤事業本部 プリンシパル・アナリストの城田真琴氏だ。Metaのマーク・ザッカーバーグCEOも、2030年の普及を目指し、目先の収益化を度外視して取り組んでいく姿勢を示している。「日本の企業は多大な期待をしすぎている」と城田氏は警告する。

野村総合研究所 DX基盤事業本部 プリンシパル・アナリスト 城田真琴氏

野村総合研究所 DX基盤事業本部 プリンシパル・アナリスト 城田真琴氏

とはいえ、新たな可能性への萌芽がそこかしこに見られるのもまた事実だ。その前に、Web3とメタバースの関係を整理しておきたい。図表1はデジタル庁に置かれたWeb3.0研究会が2022年末にまとめた報告書から抜粋した、Web3と呼ばれる技術を図示したものだ。Web3とは既存の仕組みを変革する技術の総体であり、メタバースはそれらの技術を用いることも可能な活動空間と捉えることが妥当だ。

図表1 Web3.0と呼ばれる新たなテクノロジーと将来の姿(仮説)

図表1 Web3.0と呼ばれる新たなテクノロジーと将来の姿(仮説)

Web3の技術のうち、メタバースで用いられることが多いのがNFTだ。デジタルコンテンツの真正性を担保するNFTは、メタバース空間で流通するアバターの衣装などに埋め込まれる。本来複製が容易なデジタルデータにNFTを埋め込むことによって唯一性を保障し、メタバースで自分自身の個性を表現できるというわけだ。

メタバース≠VR

さて、あらためてメタバースの定義を考えると、意外に難しいことに気づく。

HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を用いてデジタル3D空間に没入し、そこで友人たちとコミュニケーションを取ったり買い物をしたりするというのは、メタバースの一面に過ぎない。むしろこれはVRの一側面であり、メタバース=VRではない。

例えば野村総合研究所は、書籍『ITナビゲーター 2023年度版』において、メタバースを「現実世界と異なるパーソナリティ(実名・偽名を問わず人格や見た目を現実世界と変えているもの)を用いたインターネットサービス」と定義している。

この定義では、SNSのいわゆる裏アカウントやオフ会等で知り合ったコミュニティもメタバースに含まれる。一般的な理解よりかなり広い定義だが、メタバースの特徴のうち自己同一性を重視した定義だ。「本来の自分」をコンピューターネットワークで表現することはパソコン通信の時代に遡ることができるが、今日は高度に発達した映像技術、つまりXRによって、その「本来の自分」をよりリアルに表現する手段を獲得した時代ともいえる。だからこそ、アバターは重要な意味を持つ。

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