もう「ブーム」ではない
まずは、次世代情報端末市場の動向を確認しておこう。
Androidの台頭もあり、2011年1月に開催された米国最大の家電ショー「2011 International CES(Consumer Electronics Show)」では、50機種近いタブレット型多機能端末が公開され注目を集めた。日本でもスマートフォンの新機種が続々と発表されている。
一方でPCに関しては、2010年10~12月期において、需要の伸びの鈍化が顕著に表れた。これはタブレット型多機能端末の登場に起因するものと分析されており、今後、この傾向は一層加速すると予測されている。
これらの次世代情報端末が一過性のブームで終わらないことは、すでに疑うべくもない。それを裏付ける例を挙げれば、この1月には、次世代情報端末の台頭に対応すべく、NECとレノボ・グループがPC事業の合弁を正式発表した。次世代情報端末におけるOSのシェアに関しても、業界地図が大きく変化しつつある。
メモリのメーカーも、これまで主力としてきたPC向けの生産を減少させ、代わりに次世代情報端末向けメモリの生産へ注力することを表明している。パネルも同様で、大手メーカーが相次いで次世代情報端末向けの液晶パネルや有機ELの生産拡大に向けて1000億円規模の投資計画を発表している。
「使えるか」から「どう使うか」へ
読者の皆様も、さまざまなメディアにおいて、これらの次世代情報端末に関するニュースが急激に増えていることにお気づきであろう。変革はすでに始まっている。
いま企業が考えなくてはならないことは、これらの端末が「本当にビジネスで使えるのかどうか」ではなく、「自社のPCが次世代情報端末に置き換わる時代にどのように活用して効果を出していくか」なのである。
では、冒頭に挙げたように、多数の企業が積極的に試験導入を行っているにもかかわらず、なぜ実業務への適用に辿り着けないのか。その阻害要因は導入面と運用面に大きく分類される。
導入面においては、この新しいデバイスをどのように業務に役立てればよいかを決めあぐねているといったことが挙げられる。当初懸念されていたアプリケーション開発者不足の問題まで到らず、開発以前の「要件の明確化」に戸惑っているケースが実に多い。
運用面においては、iOSやAndroidといった企業に馴染みのないプラットフォームが用いられていることもあり、各社の情報セキュリティへの対応がまったく間に合っていないのが現状である。実際には、次世代情報端末の適用範囲を絞ることで、情報セキュリティ方針に接触しないよう運用を工夫しているケースが目立つ。
こういった課題を解決するにはまず、次世代情報端末の可能性とビジネスにおける位置づけを整理するのが有効だ。