韓国チェジュ島で進む大規模スマートグリッド実験(後編)――スマートホームを一般家庭6000軒に展開

イ・ミョンバク大統領の強力なリーダーシップの下、済州島(チェジュ島)で大規模なスマートグリッドの実証実験を進めている韓国。後編ではスマートホームへの取り組みと韓国スマートグリッド産業の課題を中心にレポートする。

2013年まで一般家庭6000軒で実証実験

IHDやスマートメーターなどを使ったスマートホームの実証実験は、KEPCOの広報館の中だけで行われるのではない。チェジュ島のチャウブ地区にある一般家庭にも展開する計画で、最終的には6000軒まで増加させていく予定となっている。実験に参加する一般家庭の屋根には太陽光パネルを設置して自家発電を行い、またKEPCOからの電力供給も基本的に風力発電によって賄われるという。

一般家庭をモニターにした実験は2013年まで継続される予定だ。その間、機器の性能、住民の反応など、さまざまなフィードバックを得て、実用化に向けた課題解決を図っていくことになる。チェジュ島での実証実験の成否が、韓国のスマートグリッド産業の今後にとって非常に重要な意味を持つことは間違いない。

韓国スマートグリッド産業の課題

国家を挙げてスマートグリッドに注力する韓国ではあるが、その一方で解決すべき課題も多い。ここでは3つの問題点を指摘したい。

(1)官庁間の主導権争い
スマートグリッドは電力技術とICTの融合技術である。このため他国も事情は同じだろうが、主管官庁間での激しい主導権争いが予想される。韓国では電力行政は「知識産業部」、通信行政は「通信・放送委員会」が主管しており、両者の覇権争いが今後の進捗に影響するとの見方も出ている。

例えば今回訪れたKEPCOの広報館は「知識産業部」、KTやSKテレコム、LGエレクトロニクスの広報館は「通信・放送委員会」の主管という暗黙の色分けがなされている。また、KEPCOの展示では、通信方式への言及があまりない。さらに本来であれば、WAN側の通信手段には、多くの家庭ですでに導入済みのブロードバンド回線を利用すればいいはずだ。しかし、KEPCOの広報館のデモを見ると、送電線に併設された光ファイバーを通信手段に使用することを前提に全体が設計されている。

橋本清治(はしもと・せいじ)

IT業界での30年の経験を生かし、某外資系通信機器ベンダー勤務の傍ら、エムアンドエムリサーチを運営。主に海外の通信事情リサーチやベンダーの日本進出の支援を行う。現在は特に韓国のモバイル通信事情を注視している。表面的な事実の調査だけでなく、必要があれば現地調査も行う行動派リサーチャ。“真実は体で確かめる”が身上。コンタクトはinfo@mmrjp.comまで

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