「今回の事業のなかで、新たに16個のスマートシティサービスが動き出した。この裏側で動くデータアセットは新たに17種が追加。また、3つの外部システムが会津若松市の都市OSにつながっている」
東日本大震災からの復興事業のシンボルとして、2013年にスタートした会津若松市のスマートシティプロジェクト。その現在地について、同プロジェクトの推進団体「AiCTコンソーシアム」代表理事を務めるアクセンチュア 海老原城一氏はこう述べた。
AiCTコンソーシアム 代表理事 兼 アクセンチュア イノベーションセンター福島 センター共同統括 海老原城一氏
スマートシティプロジェクトは全国各地で進められているが、その多くは「防犯」や「防災」「医療」などの分野ごとに住民サービスを提供している。これを次の段階へ押し上げるカギとなるのが、「都市OS」「データ流通基盤」と呼ばれるプラットフォームだ(参考記事:アクセンチュアが考える地域DXの鍵「都市OSで共助モデルを作る」)。
都市OSの目的は、複数種のデータを連携させることで、分野横断型の付加価値の高いサービスを創出することにある。令和4年度 デジタル田園都市国家構想推進交付金事業においてType3(データ連携基盤を活用し、複数のサービス実装を伴う取り組みを支援)の採択を受けた会津若松市は、過去10年にわたる取り組みをベースに、このデータ連携を本格化。冒頭のようにサービス数を一気に拡充した。
都市OSを活用したデータ連携のイメージ
この成果について、同市は2023年3月17日に記者説明会を開催。2022年度からの3年間で実装を計画する12分野のデジタルサービスのうち、Type3採択事業で実装を始める6分野について説明した。
農家と飲食店をつなぎ「稼げる農業」
1つは「食農受給マッチング」。野菜や果物を作る農家と、旅館やレストラン等の実需者を直接マッチングし、地産地消型の新たな流通網を構築するサービスだ。
食農受給マッチングの概要
「ジモノミッケ!」と名付けられたこのサービスでは、例えば、「〇日に△△が必要」とリクエストした旅館と、その生産者をアプリ上で直接マッチングする。逆に、農家が採れた野菜を挙げ、購入者を探すことも可能だ。
新鮮な野菜を低コストに届け、地元で消費できることに加え、「曲がった野菜など市場に出せなかった標準外のものも、調理してから出すならレストランに買ってもらえたり、配送費が安くなるので高く売れたりといった効果も出ている」と海老原氏。生産者の所得向上につなげる。