始まったWiMAXの企業導入――店舗やデジタルサイネージにも活用

商用サービス開始から半年以上が経過し、エリア整備も進んできたモバイルWiMAX。企業ユーザーにとって、どのような活用の可能性があるのだろうか。WiMAXの特徴を活かした導入事例を紹介する。

閉じた地域での情報配信に活用

地域WiMAXでも、地域の情報化という観点からデジタルサイネージへの取り組みが進んでいる。

ジュピターテレコムやインテック、ブロードバンドタワーなどが設立したオープンワイヤレスプラットフォーム合同会社(OpenWP、神奈川県藤沢市)は、09年6月に藤沢市における地域WiMAXの免許を取得。藤沢市や慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)と協力して、WiMAXや既存のネットワークを活用した地域情報の配信システム「ふじさわサイネージ」の開発に取り組んでいる。

図表3 「ふじさわサイネージ」システムイメージ図(クリックで拡大)
「ふじさわサイネージ」システムイメージ図

「WiMAXの中でも地域WiMAXはインターネットへの接続がほとんどだが、我々はインターネットにつなぐことではなく、地域のコミュニケーションを活性化することを目的にしている」とOpenWP代表の小檜山賢二氏は話す。

SFCの学内では、巡回バス「SoKanKan」内に設置したデジタルサイネージと地域WiMAXをつなぎ、バスの運行情報などを配信している。「Twitter」とも連携しており、「教授が出席を取り始めた」といった情報が画面に表示されることもあるという。

また、キャンパス内にも電子ペーパーを搭載した電子掲示板を設置、地元のレストラン紹介などの情報を配信している。

この2月には、藤沢市立秋葉台文化体育館で開催された小中学生のバレーボール大会で、体育館の外にWiMAXのアンテナを設置して、Wi-Fiに変換して屋内に設置した電子掲示板に試合結果やチーム紹介、藤沢市の豆知識などの情報を表示するという実証実験も行った。

インターネット上での情報配信はプライバシーの侵害などのトラブルにつながる可能性が高く、特に子供の顔写真を載せると身の安全を脅かす危険性が懸念されている。その点、今回は限られた地域のみで情報を配信するため、子供たちの顔写真はもちろんのこと、コーチの氏名やチームの連絡先まで載せることができ、父兄の間でも好評だったという。

環境情報学部准教授の三次仁氏は「電子掲示板に表示された情報を見ながら、隣にいる人と会話してコミュニケーションにつなげてもらいたい」と話す。

将来的には、位置情報を取得しながらその場所に合った情報をデジタルサイネージに配信することなども計画している。OpenWPでは、UQにはないニッチなサービスでビジネスモデル作りを目指したいという。

携帯電話では2010年末にNTTドコモがLTEの開始を予定するなど、今後、無線ブロードバンドにおける高速データ通信は競争が激しくなることが予想される。しかし、LTEが本格化するのにはまだ時間がかかる。それまでの間にWiMAXが事例を蓄積していくことが、LTEに対する優位性につながるだろう。

月刊テレコミュニケーション2010年4月号から転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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