通信事業者は「5Gアプリケーション領域にフォーカスできる」
―― OPEX削減以外にも、通信事業者にとってのメリットはありますか。
中田 インフラとクラウド基盤の運用管理が容易になれば、通信事業者様は新たなアプリケーション/サービスの開発や提供のところに注力できます。この点こそ、我々が最も貢献したいところです。
野地 私もそう思います。
今回の協業の目的は、手間のかかる事前検証やサポートを我々が担い、かつ、自動化ツールによって運用面の課題を解決することで、通信事業者様がより簡単に仮想RANを使いこなせるようにすること。そして、通信事業者様がアプリケーションの開発やインテグレーションにより多くの労力を注げるようにすることです。今回はRAN領域で初の取り組みとして、ウインドリバーとの組み合わせを選んだということです。
実は、今回のソリューションを発表したとき、「ベンダーロックインを回避するために“バラす”方向に向かっているのに、Dell Telecom Infrastructure Blocks for Wind Riverを使うことで、またロックインされるのではないか」と危惧されるお客様がいました。しかし、その心配はまったくありません。デル・テクノロジーズが目指す方向はあくまでオープン化であり、今回のソリューションにおいても、今後のロードマップの中でウインドリバー以外のクラウド基盤も追加していくことで、お客様が求める構成に幅広く対応していきます。
弊社は以前から、自社のサーバーと様々なベンダーのクラウド基盤との検証を事前に行うことで性能や品質を担保するという取り組みを行ってきました。それをRANに適用するための最初にタッグを組んだ相手がウインドリバーというわけです。今後、他のクラウド基盤も含めて幅広いニーズに応えられるようにすることを目指しています。
ウインドリバー日本法人 代表取締役社長の中田知佐氏
中田 ウインドリバーにとっても、こうした協業は初めてのことです。仮想RAN向けに開発したWind River Studioは、ITシステム向けのクラウド基盤と比べてプロビジョニングが非常に複雑です。お客様ごとの構成の違いや使い方によって複雑な設定を伴うからです。
それを予め定義し、デル・テクノロジーズの工場でプリインストールして出荷することで、お客様はかなりの工数を削減できるでしょう。
野地 この点には、RANの特殊性が大きく関係します。他のクラウド基盤と比べてリアルタイム性の要求が非常に高く、性能をどこまで磨き込めるかが重要になります。
そこでポイントとなるのがクラウド基盤です。RANアプリケーションの処理を、いかにリアルタイムにハードウェアへ伝えられるか。その点で、Wind River Studioは非常に優れているというのが我々の評価です。実際、仮想RANの世界での採用率も高い。今回のソリューションの最初のパートナーがウインドリバーであるという背景には、そういった点があると思います。
中田 最後に、野地さんがウインドリバーに期待することはありますか。
野地 1つは、サポート体制の整備です。先ほど述べたグローバル体制に加えて、日本のお客様の要求に対してローカルで確実に対処していく体制が欠かせません。このサポート体制の拡充はウインドリバーと一緒に取り組んでいく必要があり、そのご協力をいただきたいですね。
もう1つは、ソリューションが適用できる範囲を広げていくことです。
RANに関しては、基地局ベンダーや通信事業者様によってハードウェア構成について固有の要素が入ってきます。COTSと言われる汎用サーバーだけではその要求に応えきれません。処理を高速化するアクセラレータカードやNICが不可欠で、しかも、かなり先進的なものを使う必要があります。つまり、従来の汎用サーバーとは構成が異なってくるのです。
今後、仮想RANが本格化すれば、RANアプリケーションに特化したアクセラレータ―カード等に細かく対応していく必要性があります。その組み合わせのバリエーションを、ウインドリバーのクラウド基盤のほうでもサポートする必要性が出てくるでしょう。その点での協力もぜひ期待したいです。
中田 お互いに日本法人同士として、ローカルのニーズをしっかりと本社側に伝えて、日本のお客様のニーズにしっかりと対応していきたいですね。
野地 世界を見回しても、日本はRANの仮想化、ディスアグリゲーションに対して熱心な事業者が多い。我々がそれを支えることで、グローバル市場の発展に貢献していければいいですね。
<お問い合わせ先>
ウインドリバー株式会社
URL:www.windriver.com/japan/contact
ウインドリバー特設サイト
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