5Gの可能性にビジネス界は大いに期待しています。5Gはきわめて信頼性が高く、レイテンシーの低い、セキュアなセットワークを実現します。公共の安全、輸送車両、製造、資源・エネルギーなど、ミッションクリティカルな用途には特に効果的です。これらの業界は、5Gネットワークを生産性向上と業務効率化の手段と考えており、5Gネットワークに対する需要を高めています。
今回のコラムでは、現在のグローバル5G市場に起きている主要トレンドを4つのポイントで紹介します。
クエックテル・ワイヤレス・ソリューションズ 日本支社 リージョナルセールスディレクター 。2020年にクエックテル・ワイヤレス・ソリューションズ 日本支社のリージョナルセールスディレクターとして入社。それ以前は東芝で29年間勤務、シニアマネージャーとして産業および自動車業界において需要を開拓し、同社の半導体部門の世界的な拡大に貢献した。また、日本と韓国における自動車関連の数々の新事業を立上げ、現地営業チームの指揮、マーケティングキャンペーンの展開、新製品ポートフォリオの推進を行う。慶應義塾大学図書館・情報学専攻
1. 次の産業革命実現への期待
5Gの低レイテンシー、高デバイス密度、大量のスループットが、新しいユースケースやこれまでにないタスクの実行方法を実現することから、5Gによってあらゆる業種が変革すると期待されています。
例えば運輸・物流業界では、5Gによって、シームレスな車車間(V2V)コネクティビティや路車間(V2I)コネクティビティにより革新を生み出します。港湾においては輸送コンテナを運ぶ自動運転車により、コンテナや積み荷をすべて追跡し、他の車両をよけながら、港を安全に移動するといったことを実現します。
同時に、5Gを自衛網として利用できるローカル5Gの導入が続き、産業IoT(IIoT)のいくつかのユースケースで運用効率が向上すると予測されています。なお、日本におけるローカル5Gは、米国などではプライベート5Gと呼びますが、本稿ではローカル5Gで統一します。
IIoTのユースケースについて、クエックテルでグローバル・マーケティング担当VPを務めるシャーロット・ルビン氏は次のように解説しています。「無人搬送車(AGV)、ワイヤレスUHDカメラ、機械制御システム、協働/クラウド・ロボット、リモート資産監視などがあります」
「各企業も次第に、ローカル5Gの導入を検討するようになってきました。米国や欧州では、企業がこの目的ですでに周波数帯を取得しており、米国の建設メーカーであるジョン・ディア社では、自社の製造設備を5G対応に変えようとしています。5G対応により、コストの削減、生産効率の改善が可能になることや、またカメラを使った新しいユースケースが実現可能になります」
2. 5Gセキュリティのニーズ
現在から2028年までの間に5Gの市場は40%も成長し、すべての業種で多数の企業が5Gを採用すると予測されています。
この状況で、セキュリティは非常に重要な課題になります。無数のコネクテッド・デバイスによって、ランサムウェアから分散型サービス妨害(DDoS)まで、あらゆる攻撃の対象領域が革新的に拡大しています。いかなるコネクテッド・デバイスも、サイバー犯罪者が企業ネットワークに侵入するための「裏口」になってしまうリスクがあります。
そのため、デバイスと接続のセキュリティをしっかりと守り、企業が攻撃を受けた際には、デバイスを隔離したり、ネットワークから切り離したりできる手順を固めておくことは特に重要です。
トレリックス社で脆弱性調査を担当するプリンシパル・エンジニア兼ディレクターのダグラス・マッキー氏は、次のように指摘しています。「著しく成長したテクノロジーはいずれも、攻撃者の関心を集めてきました」
「テクノロジーが普及すればするほど、潤沢な資金を持つ攻撃者は、そのネットワークを理解し攻撃することに、より多くの力を注ぐようになります。5Gのセキュリティ・ランドスケープと脅威モデルを理解することは、産業界で価値の高いターゲット内にある重要なネットワークを保護する上で極めて大切です」
このため、ローカル5Gが普及し始める頃には、注目を浴びるような目立ったセキュリティ上の問題がいくつか発生し、その問題を修復するためのソリューションが矢継ぎ早に多数現れることが予想されます。
理想的なシナリオでは、セキュリティは開発段階で手抜かりなく装備され、問題の起きる余地のない状態にあることでしょう。しかし現実では、バグやセキュリティ・ホールは避けられません。