空港という場所が好きな人は少なくないだろう。景観の良さ、高い天井、清潔感のある空間など、旅の窓口である空港には、単なる飛行機に搭乗する場所である以上に、非日常的な雰囲気が漂っている。就職ランキングでも航空業界は上位の常連だった。
ところが、こうした華やかなイメージとは裏腹に多くの空港は、コロナ以前から経営に苦しんできた。「約8割の空港は赤字だ」。こう明かすのは南紀白浜エアポート オペレーションユニット長の池田直隆氏だ。地方活性化につながると期待されて、1960年代から多数の地方空港が建設された。しかし、その大部分は期待されていたほどの集客がかなわず、近年は新型コロナウイルス感染症による観光客の激減による追い打ちを受けた。コスト削減と集客力向上は、全国の空港に共通する課題だ。
南紀白浜エアポート オペレーションユニット長の池田直隆氏
そんな中、和歌山県のある地方空港が注目を集めている。本州最南端に位置する南紀白浜空港だ。
同空港は2019年度に民間運営が開始された際、乗降客数が約17万7000人に達し、過去最高を更新。コロナで一度は落ち込んだものの、乗降客は戻ってきており、2022年度はここまで過去最高の2019年度を上回るペースとなっている。
そんな南紀白浜空港はデジタル活用にも力を入れてきた。2022年3月からはローカル5Gを用いた実証実験を開始し、課題解決に取り組んでいる。「地方の空港には資金的な余裕もなく、空港業務を継続するには生産性向上が必須だ。そのためにはやはりデジタルの力を活用するしかない。南紀白浜空港をローカル5Gなどを用いたデジタルの力で最先端の空港に生まれ変わらせたい」と池田氏は意気込む。