日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は2011年2月10日、ネットワーク事業に関する戦略発表会を開催した。
HPは昨年7月に大手ネットワーク機器ベンダーの3Comの買収を完了し、ネットワーク事業を大幅に強化したが、日本HP代表取締役 社長執行役員の小出伸一氏はその結果、「フルポートフォリオで提供できる世界でも珍しいプレイヤーになった」と説明した。
小出社長がいうフルポートフォリオとは、サーバーからストレージ、ネットワーク、さらに運用方法や構築手法にいたるサービスまで含めて、1社で提供できるということだ。クラウドへのニーズが増大するなか、クラウド構築に必要なハードウェアからソフトウェア、サービスまでをトータルで提供する動きは、IBMやシスコなど他の超大手ITプレイヤーの間でも加速している。しかし小出社長は、ブレードサーバーやストレージ、品質テスト自動化ソフトウェア、そしてイーサネットスイッチ等の主要製品すべてで世界シェアが1位もしくは2位にあることなどを挙げ、HPの優位性を強調した。
世界市場におけるHPのシェアと順位 |
HPは3Comの買収前から、ネットワーク事業を展開している。L2/L3スイッチのProCurveシリーズがそれで、米Dell’Oro社によれば、3Com買収完了前の2010年3月期における調査でも世界シェアは9.9%と第3位につけている。ただ、ProCurveシリーズはエッジ向けが中心。つまり従来のHPのネットワーク製品群はフルポートフォリオとは言えず、例えばデータセンターインフラの構築の際にはサードパーティ製のネットワーク製品が必要になった。ところが今回、3Com傘下のH3CおよびTipping Pointの製品が加わったことで、データセンターコアからエッジ、セキュリティまでがHPのラインナップとして加わっている。執行役員 エンタープライズサーバー・ストレージ・ネットワーク事業統括 兼 HPネットワーク事業本部 事業本部長の杉原博茂氏は、サーバー/ストレージ/ネットワークを“三種の神器”と表現したが、ついに三種の神器が揃ったわけだ。
HPのネットワーク製品ポートフォリオ |
さらにHPネットワーク事業本部 エンタープライズ営業本部 兼 パートナー営業本部 本部長の久保田則夫氏は、他社との比較を表で示したうえで「HPはオープンなエコシステムをすべて提供できる」と語った。
HPと他社との比較 |
旧3ComのL2/L3スイッチ市場におけるシェアは第2位の10.1%であり、今回の買収によってHPは合わせて約20%のシェアを有するネットワーク機器ベンダーになっている。約5割のシェアを持つシスコの背中はまだ遠いものの、「圧倒的に強い第2位になった」(久保田氏)。とはいえ、国内でのシェアはまだ「3位」。できるだけ早くに2位になるのが久保田氏のミッションだというが、そのうえで一番の武器となるのはHPがこれまで培ってきた顧客やパートナーとのリレーションだという。3Comの製品力に、HPの顧客ベースやブランド力、営業力などが加われば、一気に市場を拡大できるというわけだ。実際、杉原氏によれば、すでに売上は「軽く2ケタ以上」伸びているとのことだ。
また、日本HPでは今後、ネットワーク専業のNIerを新たなパートナーとして開拓していく考え。シスコ製品よりも安価なこと、またシスコ製品以外の選択肢ができることなどから、NIerからの反応は上々だという。
HPのL2/L3スイッチの世界シェア |
国内第3位になったHPであるが、まだまだ日本でHP=ネットワークベンダーというイメージが定着しているとは言えない。果たしてHPは日本でも「圧倒的に強い第2位」となることができるのか――。「飛躍できるよう、今年はネットワークに相当重く取り組んでいく」と杉原氏は意気込んだ。