本連載の最後に、今後日本市場でのプレゼンスがますます高まることが予想される外資系ベンダーの対日戦略を概観する。それに先立って踏まえなければならないのが、日本市場の特殊性だ。
日本は国内ベンダーが圧倒的なシェアを誇る非常に“稀有”な市場である。概ね70~80%のシェアをNEC、富士通等が占有し、その残りに前述の外資系ベンダー各社がかろうじて食い込むような市場構造となっている。日本固有の技術仕様が現在の市場構造を生み出している原因とされるが、この特殊な市場構造は、外資系ベンダーの市場参入を阻むだけでなく、国内ベンダーの国際競争力を削ぐ要因とされている。
NEC、富士通ともに海外事業の強化を中期経営計画等で掲げており、国内で強みを発揮している通信関連事業のグローバル展開は重要な施策として位置付けられているが、海外の通信事業者のインフラ分野の要の領域にはほとんど参入できていない状況だ。
ここで重要となるのは、国内ベンダーが国際競争力を身につけるスピードと外資系ベンダーの日本侵攻のスピードのどちらが速いのかという問題だ。現在、外資系ベンダーは日本の通信事業者に入り込むうえで、国内ベンダーとの間で緩やかなアライアンスを締結したり、役割分担の明確化を図ってきたが、この関係も未来永劫続くものとは思えない。
日本の通信事業者がグローバルスタンダードを志向し、収益性の面に今以上の注意を払う状況ともなれば、外資系ベンダーの台頭が加速することが予想される。実際のところ、LTEやオフロード対策といった先進性の高い分野に関して、外資系ベンダーは海外で成功事例を有しており、その優位性は日本市場でも有効に機能すると思われる。
長年ガラパゴス化が揶揄されてきた日本の携帯端末市場はようやく業界再編が進んできたが、国際競争力を身につけるまでには至っていない。通信インフラ市場はそれよりもさらに閉塞性の高かった点を勘案すると、国内ベンダーは国際競争力の強化に向けて今までにない大きな意思決定を求められることになるであろう。
【インタビュー】華為技術日本 代表取締役社長 閻 力大氏 |
――御社の強みを教えてください。
閻 一番の強みは技術力です。約9万5000人の従業員のうち40%以上がR&Dに従事しています。おそらく世界最大のR&Dチームでしょう。幅広い製品をカバーしている点も特徴です。モバイル、固定、IPの3つの分野いずれでもトップ3に入っているのはファーウェイだけです。つまり、我々は次世代ネットワークに関してエンド・ツー・エンドのソリューションを提供できます。 ――ファーウェイの強みとしては、“安さ”もよく挙がります。しかし、多額のR&D投資にしても幅広い製品ラインナップにしても、コスト増の方向に働きます。なぜ高いコスト競争力を実現できているのですか。 閻 製品コストは、生産/部品/オペレーション/R&Dといった要素で構成されます。他社も中国で生産しているので、生産コストには差があまりないでしょう。部品コストも汎用部品については差がないと思います。大きく違うのはチップセットのコストです。当社にはチップセット開発専門の子会社があり、重要なチップセットについては自社開発しているのです。 R&Dのオペレーションにも特色があります。設立当初は各部署が個別に一から開発していましたが、今では数個のプラットフォームしかありません。さらに中国のエンジニアの人件費は安く勤勉でハングリーです。 ――LTEでの目標は。 閻 後発のため苦労もしましたが、ようやくモバイルインフラ市場で2位まで来ました。LTEではトップに立ちたいと考えています。すでに18の通信事業者と商用LTEネットワークの契約を結び、トライアルの契約も70を超えました。今後も、最も優れた技術を最も早く市場に出してお客様に価値を提供できるよう頑張りたいと思います。 |