アクセルスペースが挑むBeyond 5G LEOコンステは電波・光のハイブリッド通信

超小型衛星を開発・製造するアクセルスペースは、次世代衛星コンステレーションの実現に向け、電波・光のハイブリッド通信技術の研究開発に着手した。Beyond 5Gの柱となるこの研究について同社に聞いた。

アクセルスペースは、超小型衛星の開発・製造と、その超小型衛星を活用した地球観測サービス「AxelGlobe」を手掛けるスタートアップ企業だ。同社は2021年11月、東京大学、東京工業大学、清原光学とともに、「次世代小型衛星コンステレーション向け電波・光ハイブリッド通信技術の研究開発」に着手したと発表した。これは情報通信研究機構(NICT)が公募した「Beyond 5G研究開発促進事業」に係る令和3年度新規委託研究における基幹課題に採択されたもので、「LEOコンステレーション用小型衛星搭載電波・光ハイブリッド通信技術の研究開発」と「超広帯域光衛星通信システムの実現に向けた基盤技術の研究開発」を行う。

図表 「Beyond 5G次世代小型衛星コンステレーション向け
電波・光ハイブリッド通信技術の研究開発」の概要

図表 「Beyond 5G次世代小型衛星コンステレーション向け電波・光ハイブリッド通信技術の研究開発」の概要

なぜハイブリッドなのかBeyond 5Gでは、地上のあらゆる場所から海上の船舶、上空の航空機などまで、いつでもどこでも通信できるネットワークが構想されている。そのためには地上系ネットワークと、HAPS(High Altitude Platform Station:高高度基盤ステーション)や衛星通信等の非地上系ネットワーク(NTN)をシームレスに接続する必要がある。

この構想において衛星側では、地上から2000km以内の低軌道(LEO:Low Earth Orbit)に打ち上げた多数の小型衛星をメッシュ状に組み合わせ、ネットワーク化して運用するLEOコンステレーションの活用が期待されている。LEOコンステレーションは近年Space Xのスターリンク計画や、AmazonのProject Kuiperなどのメガプレイヤーが事業化を進めている。

しかし、将来的に膨大な数の衛星が打ち上げられ、衛星同士、地上-衛星間で通信するようになると、周波数資源が不足することが見込まれている。そこで必要となるのが、光通信との併用だ。「宇宙にある人工衛星同士の場合、お互いが見えていれば安定的に光で通信できる」。アクセルスペース エンジニアリング本部 研究開発ユニットリーダーの永島隆氏はこう話す。直線的に光は進むため、膨大な数の衛星同士が同時に光通信を行っても空間的に重ならず、電波のように干渉の恐れは低い。

アクセルスペース エンジニアリング本部 研究開発ユニットリーダー 永島隆氏
アクセルスペース エンジニアリング本部 研究開発ユニットリーダー 永島隆氏

ただ、課題は地上との通信だ。

「光通信だけでは、衛星から地上に繋ぐ際、どうしても雨や曇りなど天候が悪い時には光が遮られるので通信できない。晴れている地域の地上局を探してネットワークを張るというやり方もあるが、それでは通信サービスの安定性として十分ではない。そこで光通信のコンディションが悪いときには、電波を使った通信にスマートに切り替えられるようにするのが電波・光ハイブリッドシステムだ」(永島氏)

今回の研究開発で重要な点としては、どれだけ小型化できるかも挙げられる。多数の衛星を用いる衛星コンステレーションでは、打ち上げコストを抑えるために衛星1機あたりの質量を軽量化する必要があり、通信機の小型化も必須となるからだ。現在の衛星搭載用光通信機は、静止中継衛星との通信を想定した大型・大電力のものが多く、小型のLEO衛星には搭載できない。より小さくしたうえで、同時にハイブリッド化も図る必要がある。

月刊テレコミュニケーション2022年1月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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