<特集>ネットワーク未来予想図20225Gは脱・黎明期? SA本格化と〇〇不足がカギ

様々な実証が重ねられているが、まだ5Gは「普及している」とは言えない状態だ。しかし、デバイスやユースケース不足などの課題はあるが、2022年はSAのスタートを基盤に、普及の為の必要条件が揃ってくる。

「5Gは現状まだ黎明期にある」

IDC Japan コミュニケーションズ リサーチマネージャーの小野陽子氏がこう話すように、5Gはまだ一般消費者や企業に十分には浸透していない。

IDC Japan コミュニケーションズ リサーチマネージャー 小野陽子氏
IDC Japan コミュニケーションズ リサーチマネージャー 小野陽子氏

ローカル5Gに関しても現状は実証実験がほとんどだ。総務省の令和3年度「課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」には約60億円の予算がつけられ、26件が採択されるなど、実証実験は大幅に増えているが、有効なユースケースを見い出すことができた企業・団体ばかりではない。

だが、「機運は着実に高まっている」と小野氏は言う。

その理由の1つには、MicrosoftやAWS、NVIDIAなど巨大テック企業の動きがある。Open RANやMEC(Multi-access Edge Computing)、Telco Cloudなど、5G関連の様々な領域で彼らは活発に活動している。

「こうした動きを見るかぎり、『5Gは来ないよね』とか『5Gはいらないよね』と否定する声はなくなり、むしろ『この流れに乗っていかないといけない』となっていくだろう」

図表 国内産業分野向け5G関連IT市場規模予測(2020~2027年)

図表 国内産業分野向け5G関連IT市場規模予測(2020~2027年)

Note:ITインフラストラクチャ、ソフトウェア、サービスに対するエンドユーザー支出の合計。5Gによって創出されるサービス(例:MaaS)、通信サービス、端末、通信モジュール、OT領域に対する支出は含まない。 出典:IDC Japan

黎明期から抜け出せていない理由しかしなぜ5Gはいまだ黎明期から抜け出せていないのか。

小野氏はまず、市場にデバイスが少ないことを挙げる。5G対応デバイスは熱対策が難しいこと、Sub6やミリ波というLTEより高い周波数を用いるため接続自体も難しいことなどが理由だ。5Gではスマホ以外の多様なIoTデバイスの登場が期待されているが、現在は誰でも5Gデバイスを作れるわけではない。

「誰でも作れるようにするには、リファレンスデザインや支援がまずは必要だ。例えば、スマホを作っているベンダーがクルマのベンダーを支援したり、いろいろな業界で無線部分の開発を支援する仕組みができてくると、多様なデバイス開発が盛り上がってくるだろう」

課題はデバイスだけではない。アプリケーションもそうだ。

「DXサイドの人に、『最初にインフラを整えましょう』と言っても全然訴求できない。やはりアプリケーションから入っていく必要がある」と小野氏は指摘する。しかし5Gを活用したアプリケーションをその導入効果に見合ったコストで実現できるかというと、その選択肢も今はまだ少ないのが実情だ。

工場・プラントや建設現場、スタジアム、医療機関などで5Gを導入する際の有力な手段となるローカル5Gのコストが高いのも一因である。野村総合研究所 ICTメディアコンサルティング部 主任コンサルタントの澤田和志氏は、ローカル5Gのハードルとして初期費用を挙げる。

野村総合研究所 ICTメディアコンサルティング部 主任コンサルタント 澤田和志氏
野村総合研究所 ICTメディアコンサルティング部 主任コンサルタント 澤田和志氏

「始まった当初は億単位の金額だったのが、今はいろいろな基地局関連の製品や対応端末が少しずつ出てきて数千万円ぐらいになっている。とはいえ中小企業が導入するにはなかなか難しく、70社ほどいるローカル5Gの免許取得者もまだ大手しかいない」

また、世界的な半導体不足も市場に影響を及ぼしそうだ。「サプライチェーンの混乱によって産業向けの通信市場にも影響が出ており、1~1.5年遅れるというような話もちらほら聞いている」と小野氏は懸念する。

月刊テレコミュニケーション2022年1月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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