企業へ実証実験フィールドとして提供も都立大が“国内最大級のローカル5G”を整備する理由

総面積49万平方メートルにも及ぶローカル5G環境の整備を進める東京都立大学が2021年2月15日、キックオフミーティングを開催した。ミリ波・Sub6帯の両方を使った様々な研究プロジェクトを実施するとともに、5Gを活用した新製品・サービスの実証フィールドとして企業へ提供する計画だ。

2020年12月に東京都立大学(以下、都立大)は、東京都「『未来の東京』戦略ビジョン」の取り組みの一環としてローカル5G事業を開始すると発表した。南大沢キャンパスと日野キャンパスにローカル5G基地局を設置し、この環境を活用した研究や実証実験の成果を社会に還元するとともに、行政機関や民間企業等との産学公連携を通じて東京都が掲げる「スマート東京」の推進に繋げていくという目標を掲げている。


都立大が整備するローカル5G環境の概要

今回、東京都の後援により開催されたオンラインシンポジウム「東京都立大学発『スマート東京』キックオフミーティング」では、そのローカル5G環境の整備状況や活用の方向性などが説明された。

キャリア5Gの整備を待たず「先がけて研究」
そもそも東京都と都立大はなぜ、通信事業者が提供するキャリア5Gではなく、大規模なローカル5G環境を自前で構築するという判断に至ったのか。


都立大 5G・南大沢まちづくり担当部長の築田直樹氏(左)と、
都立大 副学長の吉川徹氏

都立大 5G・南大沢まちづくり担当部長の築田直樹氏は、キャリア5Gと比較したローカル5Gの「一番の特徴」として、「短期間で独自に構築可能なことと、用途に応じてスペックがカスタマイズできること」を挙げた。通信キャリアのインフラ整備を待たずに「先がけて研究・実証実験を開始できる」ことが、今回のローカル5G事業立ち上げの大きな理由となっている。

都立大が計画しているローカル5G環境の規模は“日本最大級”だ。


南大沢キャンパスの概要

4.7GHz帯と28GHz帯の特性を組み合わせて南大沢と日野の両キャンパス合計で49万平方キロメートルをカバーエリアとする計画。アンテナ数は60本に及ぶという。比較的飛びやすい4.7GHz帯で広範囲をカバーし、教員や生徒があつまる講堂や交流スペース、サークル棟に28GHz帯のカバーエリアを作る。

すでに「28GHz帯は1月から供用を開始している」(築田氏)状況であり、4.7GHz帯については2月ごろと予想される無線局免許の付与を受けた後、「3月からの供用開始に向けて準備中」だ。なお、工事期間は8カ月の予定で、現時点では問題なく進捗しているという。


日野キャンパスの概要

日野キャンパスには電波暗室も整備する計画で、外部からの電波の影響を受けずに4.7GHz帯、28GHz帯の両方の周波数帯を使った試験が行える。

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