ICT×未来

AIがRANを進化させる日 ドコモが低レイヤからの変革に挑戦

文◎松本一郎(編集部) 2020.11.04

  • bookmark
  • Teitter
  • 印刷

AIはキャリアのネットワーク運用に既に活用されているが、スループットの改善などネットワークそのものを変革しようとしている。ドコモでは低レイヤにAIを適用して、スループットなど性能向上を掲げている。

 
NTTドコモはAI技術を用いたネットワークの高度化に乗り出す。キャリアネットワークでは現在、障害検知やビーム幅などネットワークパラメーターの最適化などにAIが活用されている。既存の運用システムと連携してデータを収集・分析し、ネットワーク運用の自動化や効率化を実現しているが、今までは従来の人間の業務をサポートしたり、人間の代わりを果たすユースケースが目立っていた。

ドコモではそこに留まらず、スループット向上、ハンドオーバーの精緻化など、ネットワーク性能自体のさらなる高度化をAIで目指している。

必要となるのは低レイヤの刷新である。従来、専用ハードウェアで実現されてきた基地局機能などをソフトウェア化し、AIが学習を積み重ねながら、ネットワークをどんどん高度化していける仕組みが必要になる。

単純な処理性能という観点では、ASICによるハードウェア処理の方が圧倒的に有利だ。「低レイヤの処理遅延への要求は厳しく、機能性と処理速度を両立できるAIアルゴリズムの設計は従来難しかった」(ドコモ北京研究所 所長の陳嵐氏)。

しかし、AIの処理能力の土台となるGPUの進化がこの事情を変えた。ドコモは現在、RAN(Radio Access Network:無線ネットワーク)の機能をAIで高度化する「AI for RAN」という構想を掲げ、その実現に取り組んでいる(図表)。

 

 

図表 無線ネットワークへのAIの適用(AI for RAN)

図表 無線ネットワークへのAIの適用(AI for RAN)

 


最大40%の容量拡大AI for RANは、レイヤ1(物理層)の変革を目指す「iPHY(アイファイ)」と、レイヤ2(データリンク層)の変革を目指す「dMAC(ディーマック)」の2大研究プロジェクトから構成されている。両者の実現により「基地局装置やその配下にある移動局、あるいは隣接する基地局とのやりとりなどの効率化等を目標にしている」とドコモ北京研究所 ソリューション部長の川合裕之氏は説明する。

具体的には、「ユーザー体感の改善を目指す。ケースバイケースになるが、iPHYとdMACの両方が実現することで、受信機の性能向上や送受信機間の信号のやり取りを減らすことによるユーザスループットの向上や送受信容量の数10~40%の改善が見えてくる」と陳氏は展望する。

iPHYでは大きく、(1)シンプルなエアインターフェースの実現と、(2)汎用の送受信装置による構成の柔軟化の2つに取り組んでいる。

現状の無線通信システムでは、データの送受信が行われる前に、受信機がまず送信機側で送信された参照信号を用いて、自分のチャネル状況を送信側に知らせる等のプロセス(フィードバック)等が必要である。現状の物理層の課題について、「このような参照信号やチャネルフィードバックによるオーバーヘッドが大きいことと、データを送受信する前に遅延が発生する」と陳氏は解説する。AIを用いることでチャネル状況を受信側が測定してフィードバックするプロセスが短縮され、また受信側が過去の状況や周囲の情報を利用してチャネル推測をすることで、オーバヘッドと遅延が改善できる。

 

 

ドコモ北京研究所 所長 陳嵐氏
ドコモ北京研究所 所長 陳嵐氏

 

 

さらにより多くのチャネル情報を送信側にフィードバックするためには、AIを用いて圧縮すると、少ないオーバーヘッドでより多くの情報を送ることができる。「まずは、現状のコードブック(による圧縮)方式を凌駕する新しい方式を、AIなどを活用して開発することも、iPHYの重要なポイントだ」と陳氏は話す。

(2)送受信装置構成の柔軟化は、専用ハードウェアの機能を徐々にAIを搭載した汎用モジュールに置き換えていくことで実現する。こうすることで、「様々な送信信号に柔軟に対応できる」ようになるという。

信号に柔軟に対応できると、例えばチャネル推定処理が効率化される。チャネル推定処理とは、受信した信号を正確に復号するため、信号の減衰量などチャネル内の情報を推定する処理のこと。

現状は、サブキャリア内の信号をもとにある程度パターンに分けてチャネル情報を推定しているが、AIが伝搬環境やユーザーの状況を学習してチャネル情報を精緻に予想できるようになれば、復号時の誤りが減り通信品質の向上につながる。チャネル推定以外にも信号検出や分離などの処理も精緻化が期待できるという。

iPHYについて「最初は高度特定基地局にある受信機内部のモジュールや、その周辺のエッジサーバーなどからAIが搭載されるように処理負荷を低減する方式を探っている」と陳氏は述べる。
続きのページは「business network.jp」の会員の方のみに閲覧していただけます。ぜひ無料登録してご覧ください。また、すでに会員登録されている方はログインしてください。

スペシャルトピックスPR

netgear2012
hitec2012
comware2012

>> 今月の月刊テレコミュニケーション

月刊テレコミュニケーション【特集】ローカル5Gのホント
   
~ Sub6・SAの真実と導入企業の本音
[Part1]期待のSub6・SA 方式、その本当の実力 [Part2]中韓独のローカル/プライベート5G動向 [Part3]ケーブルテレビ 先駆者の“生みの苦しみ” [Part4]オフィスにローカル5G [Part5]ローカル5Gやるなら「現場を見てほしい」

<インタビュー>OKI 坪井正志専務「AIエッジ×5Gの社会実装進める」/日本マイクロソフト 手島主税常務「リモートを価値に変える」
●コロナで加速するクラウドPBX導入/●IP化で到来する映像伝送の新時代/●O-RANの“本命”RICとは何か/●北俊一の最強のケータイ業界への道

>>詳しい目次を見る

スペシャルトピックス

ソフトバンククラウドPBXとFMCをワンストップ
withコロナ時代の電話の課題解決!

ソフトバンクのConnecTalkでリモートワークの会社電話の悩み解消。

レンジャーシステムズローカル5G導入するならレンジャー
国内初のSA構成の免許取得も支援!

ローカル5Gの「本命」SA構成の免許取得はじめワンストップ導入支援。

マクニカIP化で“新しい放送”の世界
NVIDIAの新技術が導く未来とは?

IP化がもたらす放送の未来についてマクニカとエヌビディアが語った。

CASO複数SIMで切れないモバイル通信!
映像伝送から産業用まで幅広く対応

独自技術「Speed Fusion」で、安定して切れない、高速モバイル通信!

ネットギア業務用AVのIP化は「SDVoE」

大規模なデジタルサイネージや
ビデオウォール等への映像配信を、
もっと低コスト・シンプルに!

LANが届かない、電源がない──。
映像伝送の「困った」を解決!

IP監視カメラの設置を諦めていた企業に朗報!

NTTコムウェアスマホの中に会社の電話機が入り
テレワークでも固定電話に対応!

テレワーク時の電話対応をどうすれば? クラウドPBXで解決だ!

マクニカネットワークス株式会社/Actility S.AIoTで勘や記憶に頼らないコロナ対策

IoTによる換気と接触の見える化で、データに基づいた「3密回避」が簡単に実現できる。

原田産業なぜ、5Gの「超低遅延」の実現に
高精度な時刻同期が不可欠なのか?

5Gの真骨頂「超低遅延」に欠かせない高精度グランドマスタクロック!

Juniper Virtual Summit for Japanジュニパーがオンラインイベント
AIOps、5G、クラウドの最新情報!

<12月3日開催>加速するクラウド活用とネットワークの変革

スリーダブリュー多彩なローカル5G関連企業と連携

スリーダブリューは、多様なプレイヤーと連携し、ローカル5Gの課題をワンストップで解決できる。

RADWIN4.9GHz帯無線で建機の遠隔操作!

鉄道での実績に加え、昨今は建機や港湾クレーンの遠隔操作を実現する無線インフラとしても注目。

日本シエナコミュニケーションズ光/IP融合で5G超低遅延

光伝送のリーダーであるシエナは、光/IP融合に磨きをかけ、5G URLLCとNWスライシングの効率運用に貢献

パイオリンク <帝京大学>ADCによる負荷分散で
オンライン授業の品質を担保

コロナ対策でオンライン授業に全面切替。パイオリンクのADC導入!

Cisco Webex Calling取り残されてきた「固定電話」
新しい働き方の鍵はクラウドPBX

テレワーク中の会社宛電話をどうするか? 解決策を探ってみよう!

マクセル太陽電池はもう時代遅れ!
リチウム電池で8年以上の持ち

マクセルの「IoT電源システム」は、リチウム電池を用いた従来ない電源

アイ・オー・データ機器リチウム電池で安定的に水位計測

アイ・オー・データの「水位監視用電池式IoT通信システム」ならコンパクトサイズで設置も簡単!

NECネッツエスアイ自然災害の被害をIoTで最小化

LPWAを活用した災害対策サービスを提供するNECネッツエスアイ。最適な通信規格がマルチに選べる!

スリーダブリューローカル5G局開設を全段階で支援
レンタルでコスト障壁に挑む

ローカル5G向けの基地局レンタルパッケージが提供開始!

マイクロフォーカス5G時代の高速アプリ開発!

モバイルアプリなどの開発をさらに高速化するためには、「Enterprise DevOps」への進化が欠かせない。

NVIDIA EGXエッジAIの最適解はGPUにあった!

NVIDIA EGXでエッジコンピューティングの課題を解決し、「スマートエブリシング革命」の実現を!

IDaaSクラウド時代の新常識! 今こそIDaaSを導入すべき3つの理由

クラウドを活用するなら、ID/アクセス管理もクラウドに!

ローデ・シュワルツローカル5Gの測定ニーズの
全てに応えるローデ・シュワルツ

設備構築時の干渉調査・エリア確認、運用開始後の管理までカバー!

MOVEit「パスワード付き圧縮ファイル」
にはもう頼らない!

セキュアなファイル転送を簡単かつ迅速に実行するには?

ホワイトペーパー
ローカル5G情報局

アクセスランキング

tc202012

「通信」の力でビジネスを進化させるbusinessnetwork.jp

Copyright(c) 2020 RIC TELECOM Co.,Ltd. All Rights Reserved. 記事の無断転載を禁じます