<特集>ローカル5G中間報告<ローカル5G導入最前線#3>つなぐネット「サブ6を待ってマンションFWA実験」

国内各地でローカル5Gの導入が始まった。先行する事業者はローカル5Gにどのような期待を抱き、実際にシステム構築・運用を進めるなかでどんな課題に直面しているのか。第3回は、マンション向けISPであるつなぐネットコミュニケーションズの取り組みをレポートする。

アルテリア・ネットワークスのグループ会社であるつなぐネットコミュニケーションズは、三菱地所、東京建物の4社共同でローカル5Gの実証実験を始める。8月の実験免許取得を見込んで準備を進めているところだ。

共同実験の目的は、マンション向けの全戸一括型無線インターネット接続サービスだ。

アルテリア・ネットワークス 新規事業開発部 部長の大倉悠氏は、「マンション敷地内に5Gアンテナを設置し、全住戸に向けて電波を吹く」と話す。共同住宅では通常、棟内にLAN/光ケーブルを配線するが、これを5GによるFWA(固定無線アクセス)で無線化するのだ(図表)。

図表 マンション内でのローカル5G活用サービスのイメージ

図表 マンション内でのローカル5G活用サービスのイメージ

近年は、マンション新築の際に棟内全住戸へ光配線を行う物件も増えてきているが、既存のマンションに後からケーブルを配線するには多くの手間とコストがかかる。FWAサービスが実現できれば、大幅な工数・コストの削減になる。

大規模なら早期サービスも同社では、総務省でローカル5Gの検討がスタートした当初から導入の検討を始めていたという。実験開始に時間を要したのは、「サブ6帯、SA(スタンドアロン)構成でできるようになるのを待っていた」(大倉氏)からだ。「28GHz帯では難しい。SA構成でサブ6なら事業化できるとの感触を得て免許申請に至った」という。

アルテリア・ネットワークス 新規事業開発部 部長 大倉悠氏
アルテリア・ネットワークス 新規事業開発部 部長 大倉悠氏



実験は、三菱地所と東京建物の賃貸マンションで行う。「最も大きいもので約500戸、小さなところで40~50戸と大規模から小規模まで複数の建物で実施を予定している」

まずはコアネットワーク設備を使わず、アンテナを敷地内に設置し、電波試験から始める。電波強度をテストし、アンテナの数と設置場所を変えてカバー範囲を検証。1戸あたりの収益性も確認する。

現状では設備が高価であり、実用レベルまで価格がこなれるには少し時間がかかると大倉氏は見込む。ただし、「それまでサービスができないことはない」とも話す。「戸数の多い大規模マンションなら早期のサービス提供も可能性がある。大規模マンションの光配線への投資額と比較すれば、早期のサービス開始のチャンスはある」という。

実験の進捗に合わせて、仮想化モバイルコアやオープンRANの検討も始めており、電波試験の後、コア設備も含めた実証実験に移る計画だ。

携帯キャリアよりも安くできるいずれ携帯キャリアがコンシューマー向けFWAサービスを提供することも考えられるが、大倉氏は「あくまでキャリアはモバイルがメインになる。我々はFWAに集中し、全戸一括型で提供するビジネスモデルを活かすことで、より安価なサービスが提供できると考えている」。現状のネット接続と同様、全戸でインフラ設備を共用することでコストパフォーマンスの高いサービスに仕上げていきたい考えだ。

将来的にはマンション以外にも商業ビルや工場、店舗などアルテリアの顧客にもFWAサービスを展開する計画だ。「ローカル5Gを使いたいと考える幅広い業種にソリューションを提供する事業者になりたい」と大倉氏は話している。

月刊テレコミュニケーション2020年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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