通信各社はコロナ対策にどう動いたか ICTで防ぐ感染拡大

コロナ危機の最中、政府や通信事業者はどう動いたのか。総務省で新型コロナウイルス感染症対策を担当する筆者が、感染拡大防止にICTがどう活用されたのかを解説する。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が海外でも国内でも拡大し、その拡大防止が1月以来、危機管理上の重大課題であり続けている。

この数カ月、ICTは、情報伝達手段としてはもとより、コロナ危機下の人々の生活、社会、産業を支える基盤として力を発揮してきた。このICTを更にどう活用し、社会をどう変革していくべきかを展望するためにも、ICTがどういう局面でどう活用され、そのためにその担い手の方々がどう努力・貢献されてきたかをあらためて振り返ってみる意義は小さくないだろう。

基本的通信手段の確保、感染拡大防止、そしてそれを更に進めて社会構造のデジタル化の推進という3つの側面から振り返ってみよう。

1.通信手段の確保(1)帰国者、クルーズ船乗船者への対応

COVID-19へのこれまでの対応を振り返ると、海外での発生局面での対応に始まり、次いで、国内での感染拡大への対応へと移っていった。

感染症が海外で発生した当初の局面において、最大の課題は、海外の邦人やその関係者等の帰国と健康の確保をいかに図るかにあった。帰国者や対応する医療従事者等の基本的な通信手段確保が急務であり、通信事業者各社らがこれに奔走した。

日本政府のチャーター便第1便(1月29日帰着)から第5便(2月17日帰着)で中国湖北省から帰国された方々の多くには、帰国後およそ2週間の間、宿泊場所で滞在いただくこととなった。その間の通信手段として、総務省 総合通信基盤局は携帯電話事業者各社に依頼し、携帯電話計27台、Wi-Fiルーター計932台を配備した。

また、横浜市大黒埠頭に繋留したクルーズ船の乗客・乗員の方々への対応のため、総務省総合通信基盤局では、厚生労働省からの要請に応じ、2月6日、10日、15日の3度に亘り、船内乗員及び医療チームの意思疎通のため、総務省が保有する災害対策用移動通信機器(トランシーバー100台等)の貸出を実施。船内ラウンジに滞在する医療従事者等の通信環境のため、2月11日には、携帯電話事業者3社に依頼して、屋内用レピータ17台を横浜検疫所に引き渡した。船内の携帯電話利用の確保のためには、更に携帯電話事業者3社が電波の増強のための車載型基地局を横浜港に設置して2月11日から電波発射した(写真1)。これに加え、船内のWi-Fi環境等の改善のため、NTT東日本がクルーズ船と光ファイバ回線を2月14日に接続した。

[写真1]クルーズ船内の通信確保のための車載型基地局(提供:総務省)
[写真1]クルーズ船内の通信確保のための車載型基地局(提供:総務省)



また、ソフトバンク及びLINEは、厚生労働省を通じ、船内の客室等との双方向コミュニケーション強化のため、アプリをインストールしたiPhone約2000台を船内全室に配布し、薬に関する要望受付や心のケア相談、医師への相談予約等に活用していただいた(客室・乗員へ貸与された)。

乗客らの方々がクルーズ船から下船された後も、総務省総合通信基盤局では、携帯電話事業者各社に依頼し、この方々の宿泊先での通信環境確保のため、Wi-Fiルーター計670台(2月13日から25日まで)、スマートフォン計400台(2月21日から25日まで)を配備した。

月刊テレコミュニケーション2020年6月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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