携帯キャリア向け無線技術の品質は最高レベルだ。「特に信頼性が他の無線と段違いです。例えばLTEの場合、基地局が1ms毎に各端末の通信状況をモニタリングしています」とハイテクインターでCTOを務める大山輝夫氏は解説する。加えて、キャリアが利用する電波は、免許を取得した事業者しか利用できない「ライセンスバンド」である。このため干渉の心配もなく、安定した通信を実現できる。
今まで一般のユーザー企業には認められていなかった、この2つの“特権”だが、朗報がある。
一般企業が、2.5GHz帯のライセンスバンドを使って、LTEで自営網を構築できるプライベートLTE制度である「自営等BWA(広帯域移動無線アクセス)」が解禁されたのだ。
「Wi-Fiの場合、屋内に障害物の多いプラントや鉄粉が舞う製鉄所などで通信が急に途切れるといったトラブルを避けるのは困難でした。プライベートLTEならば、こうした場所でも安定します。すでに、お客様から自営等BWAに関してのお問い合わせは多く頂いています」とハイテクインターで執行役員を務める寺田健一氏は語る。
小型・大型基地局の構成図(クリックして拡大)
最近はローカル5Gも盛り上がっており、多様なベンダーが取り組んでいる。「ただし、ローカル5Gはあまりに値段が高いため、一般的なユーザー企業はなかなか手が出せないのではないかと思います」と大山氏は指摘する。
プライベートLTEの強みは、比較的安価に導入できることだ。加えて「将来的にローカル5Gを導入するにも決して無駄な投資にはなりません」と大山氏は断言する。
LTEをアンカーに5Gへ NSA構成なら無駄にならないなぜ、プライベートLTEの導入がローカル5Gに向けても無駄にならないのか。それは、5Gは当面、4G/LTEのインフラを利用する「NSA(Non Stand Alone)」で構築するからだ。
NSAではデータ信号は5Gで送受信するが、制御信号は4G/LTEで送受信する。つまり、4G/LTEネットワークがローカル5Gにも当面必須である。この制御信号用のネットワークはアンカーと呼ばれるが、ローカル5Gを導入する際にも、このプライベートLTEは活躍するため、投資は無駄にならないのである。
また、自営等BWA用の2.5GHz帯の電波は、ローカル5G用の電波と比べて障害物にも強く、遠くまで飛ぶ。そのため広域を4G/LTEでカバーし、必要なエリアだけ5G化するという運用も有効だ。
「工場などでIoTを導入するにはネットワークの速度だけでなく、多接続性を重視されるお客様が多いと思いますが、広域をカバーする意味でもアンカーとしても4G/LTEは非常に有効です」と大山氏は説明する。