「オフィスの電話を持ち歩けるようにする」――。これにより、働き方の柔軟性は飛躍的に高まる。
チャットやWeb会議等が普及してコミュニケーションの方法が多様化しても、電話の重要性は失われていない。顧客・取引先からの問い合わせや受発注といったクリティカルな業務を電話に頼っている企業もまだ多く、オフィスにかかってくる電話に“縛られる”状態のままでは、働く場所の自由度は損なわれてしまう。
加えて、日本企業に特有のPBX電話の使い方も、現代の働き方に適さなくなってきている。
“部署受け”の電話番号を複数人で共有し、かかってきた電話を取り次ぐスタイルが、多様性を重視した働き方にそぐわないのは明白だ。外線電話の取り次ぎは誰にとっても手間でしかない。社員同士の通話にも課題はある。オフィス内では内線番号を使うが、在宅勤務や外出をした途端に外線電話をかけなければならなくなる。いつでもどこでも同じIDやアドレス、同じ操作でつながるチャット/メールとは大きな違いだ。
大企業でもクラウドPBXの導入検討が加速働き方とコミュニケーションの仕方が変わるなかで、旧態依然として変わらない電話の不便さが際立つようになってきた。これを見直そうとする企業から関心が集まっているのが、スマートフォンを内線化するFMC機能を備えたクラウドPBXサービスだ。
オンプレミス型PBXから、FMC対応のクラウドPBXに移行することで、外出中や在宅勤務時でもオフィスの電話番号(0AB~J番号や050番号)による発着信や内線通話が可能になる。社員間の通話は無料で、既存のスマートフォンや社員の私物端末が使えるサービスも多いため、通話料と端末費の低減にもつながる。
保留・転送やコールピックアップ(代理応答)等のPBX機能をサポートしているため、オフィス内では従来通りの電話運用も可能だ。加えて、ユーザーが自ら管理画面を操作して設定変更が行えるため、社員の増減や部署異動等にも迅速に対応できる。
図表1 オンプレミス型PBXとクラウドPBX[画像をクリックで拡大]
こうしたクラウドPBXの利点について理解が広がり、導入を検討する企業も増えてきている。
J.D.パワージャパンが9月5日に発表した「2019年法人向けIP電話・直収電話サービス顧客満足度調査」によれば、クラウドPBXを利用している企業は数%に留まるものの、今後の電話システム更改においては「クラウドPBXを利用したい」とする回答が15%まで増加している。大企業ほどその意向が強いという。
その理由も、PBXの保守管理コスト削減や管理負荷低減といったコストダウンに関するものに加えて、「モバイルの活用」が多く挙がる。