<シリーズ>キャリアネットワークのメガトレンド5G基地局はオープン化へ――ゲームチェンジの引き金を引くO-RAN Alliance

仮想化/オープン化の波はコアネットワークから、ついにRAN(無線アクセスネットワーク)の領域にも及んできた。多様なハードとソフトを組み合わせて目的に応じたRANを作る。そんな世界が早ければ年内にも到来する。

NTTドコモ、AT&T、チャイナモバイル、ドイツテレコム、オレンジの大手キャリア5社が中心となり、2018年2月に設立したO-RAN Alliance。現在はキャリア19社と50社超のベンダーが参画するこの団体は、多様な装置/モジュールを組み合わせて構築できるオープンなRAN(Radio Access Network:無線アクセスネットワーク)を実現しようとしている。

従来のRANは、いわゆるメガベンダーが1社で提供することが多かった。オープン化によってこの状況を変え、エコシステム拡大によるコスト減や、RANを構成するコンポーネント単位での機能拡張を可能にしようというのがO-RAN Allianceの狙いだ。オープンなインターフェースを規定し、様々なベンダーが提供する“部品”を組み合わせられるようになれば、多様な要件への対応やサービス展開を迅速化したり、さらにはイノベーションが活性化したりといった効果が期待できる。

加えて、O-RAN AllianceはRANのインテリジェント化も目標に掲げている。

5GネットワークはLTE時代に比べて複雑化することが想定されており、人手による運用や最適化は困難になる。そこで、AI技術の活用等による最適化、ネットワーク運用自動化を目指した活動も進めている。

年内にも商用稼働か昨年2月の設立後、実質的には9月から本格的な活動が始まったO-RAN Allianceだが、今年に入って早くも目立った成果が現れた。

2019年3月に、C-RAN(Centralized RAN)構成におけるベースバンド処理部と無線部を接続するフロントホールのインターフェース仕様を公開した。O-RAN Allianceに参画するベンダーはこれに準拠した基地局装置を開発し、キャリアもテストを経て、2019年度から5Gの商用ネットワークに導入する方針を表明している。

この「O-RANフロントホール」によってキャリアは、複数ベンダーの親局と無線子局(Radio Unit:RU)をつないだマルチベンダーRAN(図表1)を構築することが可能になる。

図表1 マルチベンダーRANのイメージ
図表1 マルチベンダーRANのイメージ

5Gでは、カバー範囲の小さな基地局装置を多数設置する形でのRAN展開が見込まれているため、設置場所やフロントホールの確保が課題となる。マルチベンダー化によって選択肢が増えれば、設置環境や展開シナリオに応じて最適な基地局装置を活用できるようになる。

いち早く、このO-RAN仕様に準拠したRUを開発したのがNECだ。

3.7/4.5/28GHz対応の小型・軽量なRUを用意(図表2)。O-RANで活動する同社 ワイヤレスアクセスソリューション事業部 エキスパートの桶谷賢吾氏は、「今後、他ベンダーの装置との相互接続試験を進め、パートナーの製品を組み合わせてRANソリューションを提供していく」と語る。相互接続試験のテストスペックは、7月以降にファーストバージョンが公開される予定だ。

図表2 NECが開発したO-RANフロントホール仕様準拠の5G基地局装置
図表2 NECが開発したO-RANフロントホール仕様準拠の5G基地局装置

なお、公開されたインターフェース仕様は5Gと4G LTEの両方をサポートしているが、「NECとしては、5Gにフォーカスして展開していく」方針という。早ければ「2019年後半から来年にかけて、O-RAN準拠のRANによるサービスが始まるのではないか」と桶谷氏は展望する。

月刊テレコミュニケーション2019年6月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります

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