ネットワークエンジニアが要らない、誰でも使いやすいWi-Fiシステムを作る――。そんなコンセプトを掲げて無線LAN市場で躍進しているベンダーがある。元アップルの技術者であるロバート・ペラ氏が2005年に創業した米Ubiquiti Networksだ。
調査会社Dell’Oroによれば、2017年の法人向け無線LAN市場におけるシェアはシスコシステムズ(29%)に次ぐ2位(17%)。シスコ、HPE Aruba、Ruckus Wirelessといった競合が横ばいあるいはシェアを落とすなか、4年連続でシェアを拡大している。
また、ビジネス領域はWi-Fiに留まらず、ルーター/LANスイッチ、ネットワークカメラなど豊富なラインナップを揃える。ネットワーク全体を効率的に管理できる無償のソフトウェアコントローラと合わせて提供することでユーザーの支持を獲得。最新の決算(8月24日発表)では年間売上10億ドルを突破した。
Wi-Fi、LANスイッチ/ルーター、ネットワークカメラ等、豊富なラインナップを揃える
人気の秘密は「明朗会計」日本での知名度は低いが、今後は注目が集まりそうだ。
これまでは国内に正規代理店がなく、少数のユーザーが並行輸入品を購入して利用している状況だったが、今年4月、海外のネットワーク製品を主に取り扱うソネットが日本総代理店として国内販売を開始した。同社・取締役営業部長の小林康英氏は「かなり反響が大きい。国内販売開始を聞きつけたお客様からの問い合わせが次々来ている」と話す。工場や老人ホーム等への導入もすでに決定しており、今後は店舗やオフィス向けにも提案を進めていく考えだ。小売・飲食店向けにWi-Fiサービスを展開する事業者での採用検討も進んでいるという。
ソネット 取締役営業部長の小林康英氏(左)と、通信事業部販売技術部長の立松正光氏
Ubiquiti製品が人気を集める理由の第1は「ライセンスフリー」の価格体系にある。
法人向けネットワーク機器は一般的に、初年度のライセンス費をバンドルして販売し、2年目以降も管理機能等を継続使用する場合にはライセンス費をユーザーが支払う。「お客様にとっては納得しにくいコストで、仕方なく払ってきた」(小林氏)。このライセンス費が、Ubiquiti製品には一切ない。機器を買えば、その後は追加費用なしにずっとフル機能が利用できるのだ。
管理ツールをライセンスフリーで利用できることが最大のウリだ
というと、機器そのものが高いのではと思われがちだが、11ac対応の無線アクセスポイント(AP)の希望小売価格は約3万円、ギガビット対応VPNルーターが約1万円、8ポートのギガビットPoEスイッチが約5万円と低価格だ。「シスコやアルバの同等品に比べて初期投資も半額以下に抑えられる」と小林氏。この“価格破壊”戦略こそ、躍進の最大の要因だ。