企業ネットワーク最前線

総務省・料金サービス課長が解説「スマホ料金低廉化へ競争を加速」

文◎藤野克(総務省 料金サービス課長) 2017.09.05

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普及の進むスマートフォン。他方、「料金負担が大きい」との不満の声が利用者から上がっている。本稿では、モバイル市場の競争加速化に向けた行政の取組の経過と今後の展望を紹介する。

 
モバイルネットワークインフラは、3グループによる寡占市場の状態が久しく続いている(図表1)。そのため総務省では、インフラ事業者(MNO)だけではなく、非インフラ事業者(MVNO)を含めた公正な競争を促すことで通信料金の適正化を図る取組を続けてきている。

 

図表1 移動系通信契約数における事業者グループ別シェアの推移
図表1 移動系通信契約数における事業者グループ別シェアの推移


課題は大きく分けて4つある。第一に、寡占的に提供されるインフラのMVNOへの開放、第二に、利用者がモバイル事業者を変更する場合の端末の継続利用の機会を確保すること、第三に、利用者が端末とネットワークサービスの選択に自由度を持つこと、第四に、利用者がその利用実態に合った料金プランを選択できるようにすることだ。

ネットワークインフラの開放まず、インフラの開放について見てみよう。

インフラ市場の寡占状況は、モバイルサービスのために割り当てる電波の有限希少性で説明されることも多いが、必ずしもそれだけが要因ではない。これまでに数多くの事業者に周波数は割り当てられてきたが、結局は合併等によって3グループに収斂しており、大きな設備投資が必要な分野であることが寡占化の大きな要因となっていると見られる。

そういう中、有効な競争を創出していく上で重要なのは、インフラを持たないMVNOにもインフラを持つMNOと同様にインフラへのアクセスを可能とし、利用者に対して互いにサービスの提供条件を競い合うことができるようにすることだ。

したがって、政策展開で目指すのは、MNOのインフラ投資へのインセンティブを損ねることなく、そのインフラを様々なビジネスアイディアを持つMVNOが利用できるようにすることだ。そのため、インフラへのアクセスにおいて支払う接続料など接続条件をメニュー化する接続約款の整備の政策が採られてきた。

その最初の足がかりは、平成12年12月21日の電気通信審議会の「接続ルールの見直しについて」の第一次答申の提言で、これを受けた平成13年の電気通信事業法改正により第二種指定電気通信設備の制度が創設された。

モバイルサービス市場で、相対的に多くの端末を収容する設備を設置するMNOは、ネットワーク接続協議で強い交渉力を持ち、優位な立場に立つため、他のサービス提供者の市場参入を阻止する能力がある。第二種指定電気通信設備の制度は、この点に着目し、MNOのインフラへのアクセス条件を接続約款でメニュー化することを求めるものだ。その中で、接続料については、「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたもの」を上限とする適正な水準とすることとされた。

この政策はこれまで、①ルールの対象となるインフラの範囲の見直しと②接続料算定の適正性を厳正化する方向で進められてきた。

ルールの対象となるインフラは、結果として、拡大され続けている。平成14年2月7日に当時のNTTドコモグループ、沖縄セルラーの設備が指定され(平成20年7月1日には再編された現NTTドコモについて指定)、平成17年12月7日にはKDDIの設備が、平成24年12月21日にはソフトバンクモバイルの設備が指定された。これで寡占3グループの携帯電話設備がルールの対象となった。

接続料の算定方法については、平成21年10月16日の情報通信審議会答申「電気通信市場の環境変化に対応した接続ルールの在り方について」の提言を受けて、平成22年3月に「第二種指定電気通信設備制度の運用に関するガイドライン」が定められた。当時のガイドラインの「第3」において、接続料の算定方法が詳述され、原価に算入されるべきでないコスト(営業費の多くと設備費の一部)が示された。また、同年の電気通信事業法改正で、接続料算定の透明性と検証可能性を高めるために、これら事業者に接続に関する会計を整理する義務が設けられた。これらはいずれも、「適正原価」の算定を厳正化するためのルールだ。

平成27年の電気通信事業法改正では、接続料の算定方法は省令で定められることとなり、そのための省令(第二種指定電気通信設備接続料規則)は、平成28年5月21日に施行された。これも上記の「適正原価」の算定方法に関するルールだが、平成29年2月15日に同省令が改正され、「適正利潤」の算定方法についてもルールがさらに整備された(自己資本利益率がモバイルビジネスのリスクに見合ったリターンとなるように厳密化された)。

こういった取組により、MNO3グループの接続料は着実に低下してきた(図表2)。データ通信の場合、この5年間でも86%減少した。

 

図表2 モバイル接続料の推移[画像をクリックで拡大]
図表2 モバイル接続料の推移


このルールに関する現下の検討課題は、MVNOのサービスクオリティを上げるためのルールだ。MNOでは、BWA(WiMAX2+やAXGP)との電波利用の連携でエリアのカバレッジを広げ、また、その通信速度を上げることができるようになっている。そこで、BWAのインフラへの接続も含めた接続料算定のルールが必要ではないか、総務省では検討を進めていくことにしている。
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著者プロフィール

藤野克(ふじの・まさる)

総務省 総合通信基盤局 料金サービス課長。1990年郵政省(現総務省)に入省。電波政策課企画官、在米国日本国大使館参事官、貯金保険課長、地上放送課長などを経て、2016年から現職。著書に『電気通信事業法逐条解説』(08年共編著)、『インターネットに自由はあるか 米国ICT政策からの警鐘』(12年)(12年度大川出版賞受賞)がある。

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