携帯電話とは、やはり違う――。
スマートフォンを国内市場に根付かせたiPhone、そしてiPadも、業務変革ツールとして企業に浸透し、威力を発揮し始めている。従来のモバイル端末にはできなかった使い道に着目し、その効果を検証した導入担当者の声を集め、今後の可能性を探っていこう。
「店舗販売業務が変わる」
紳士服・婦人服販売大手のニューヨーカー(東京都渋谷区)は5月、埼玉県越谷市のイオンレイクタウンkaze店にiPadを2台試験導入した。
ECサイトのデータを読み込み、タッチパネル操作で商品検索や閲覧、比較などができる五反田電子商事の販促用ツール「ミライタッチ for iPad」を活用しており、1台はレジ前に置かれ、来店客が全商品の情報をiPadで検索できるようになっている。販売員がつかまらないときでも効率的に商品が探せると好評だ。
レジ前に置かれた来店客用のiPad |
またもう1台は、販売員が欠品中の商品も含めて色違いの商品画像を来店客に見せたり、下写真のように画面内で上下を組み合わせたコーディネート提案を行ったりと、接客ツールとして活用している。
販売員も接客の際にiPadを活用。「店頭にない商品もその場でお客様に見てもらえる」と好評だという |
「ノートPCでも携帯電話でもない、あの大きさが丁度いい。説明しなくても感覚的に使える操作性もいい。iPadじゃなければ、(今回のような取り組みは)やっていないだろう」と販売統括本部e推進部の酒井英氏は語る。
ニューヨーカー販売統括本部e推進部の酒井英氏 |
同氏は五反田電子商事とともに、昨年からECサイトを構築。その一環として、店舗へのデジタルサイネージの導入提案を受けていたという。今回のiPadのように、来店客がサイネージで商品検索等が行えるようにするのがその目的だった。しかし、設置に場所を取り、当然ながら動かせないこともネックになり、導入を決めかねていた。
そこに登場したのがiPadだ。酒井氏は「持ち運べて起動も早い。これならスタッフとお客様の動きに合わせて使える」と検証の実施を即決した。当初は販売員にも戸惑いが見られたというが、使ううちに「接客中のどのタイミングで使えばいいのか、コツもつかんだようだ」。実店舗での評価を集め、正式導入については7月中に見極めたいと話す。
また酒井氏は、画面サイズとともに、PCとは異なる起動の速さと操作性に大きな可能性を感じているようだ。「POSデータや在庫データ、ECサイトの顧客データと連携できれば、店頭での大きな武器になる」と話す。
店頭にないサイズを確認するには、通常なら倉庫に行ったり、カウンターのPCを操作するために客のそばを離れざるを得ない。だがiPadがあれば、そのリスクを避けられる。また、ECサイトでの検索・購入履歴を確認できる仕掛けさえあれば、来店客のデータを把握しながらその場で接客できる。
「片手で持てる大画面の端末でそれができるようになれば、店舗業務は間違いなく変わる」と同氏。
今回の試験導入によって得られた販売員や顧客の反応は、こうした将来構想においても非常に有益な情報になりそうだ。