導入・選定ガイド

企業向け無線LAN製品ガイド【前編】――IEEE802.11nの導入メリットとは?

文◎楽天理(テクニカルライター) 2010.08.24

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有線LANと遜色のない速度を実現したIEEE802.11n。2009年9月に標準化が正式に完了したのを受け、最近、企業ユーザーの間で無線LAN導入の動きが活発になってきている。前編ではまず、無線LANの基礎と11nのメリットを解説する。

無線LANの位置付け

LANケーブルを使わずに電波を使ってネットワーク接続を可能にする無線LANは、OSIの7層モデルでいえば、レイヤ1の物理層とレイヤ2のデータリンク層の部分を有線から無線に置き換えたものだ。

一方、モバイル機器や周辺機器にはWiMAXやBluetoothなども搭載されているが、これらの無線通信と無線LANはどのような位置関係になっているのだろうか。

その様子を示したのが図表1である。つまり、無線を使ったネットワークは無線LAN(Wireless Local Area Network)だけではなく、通信可能な距離によって、無線PAN(Wireless Personal Area Network)、無線MAN(Wireless Metropolitan Area Network)、無線WAN(Wireless Wide Area Network)、無線RAN(Wireless Regional Area Networks)に分類されており、それぞれの分野で技術開発が進められているのである。

 

図表1 無線通信の全体像
無線通信の全体像

無線LANの規格動向

図表1に示したように、無線LANはIEEE802.11でその通信規格が策定されており、これらの規格に準拠した製品の相互運用性を認定する業界団体として「Wi-Fi Alliance」が存在する。Wi-Fi Allianceでは製品の相互接続性を保証するために互換性テストを行っており、これに合格した製品は「Wi-Fi Certified」というロゴを製品に表示できるようになる。

現在までにIEEE802.11委員会で策定された主な規格を図表2に示す。1999年に策定されたIEEE802.11bを契機に、無線LAN市場が形成されるようになり、続いてIEEE802.11aが策定され、2003年にはIEEE802.11gの対応製品が登場した。そして、2009年にはIEEE802.11n(最大600Mbps)が策定され、これを受けて、企業での無線LAN導入が加速するものと期待されている。なぜなら、次のような導入メリットを挙げることができるからだ。

 

図表2 無線LANの主な規格
無線LANのスペック表
電波は、周波数が高くなるほど波長が短くなることから、障害物などの影響を受けやすくなり、減衰しやすくなる。従って、5GHz帯のほうが2.4GHz帯 に比べると通信距離は短くなり、カバーエリアは狭くなる。一方、802.11nの場合には、MIMO技術の採用により高速化を実現しているだけでなく、 ビームフォーミングや合成ダイバーシティの導入により、通信品質(安定性)の向上と、通信距離(カバーエリア)の拡大を図っている。MIMOとビームフォーミングについては、【コラム】無線LANの高速化を実現する「MIMO」と「マルチユーザーMIMO」 を参照して頂きたい。また、合成ダイバーシティとは、電波の受信レベルの変動が大きいときに、複数のアンテナを使って電波を受信し、それらを合成すること で通信品質を向上させる技術のこと。

IEEE 802.11n の導入メリット

・有線 LAN と比較して遜色ないネットワーク環境を構築できる
通信速度が大きく向上したことで、有線LANと変わらないアクセス性を得ることができる。大容量ファイルの送受信、サーバーへのアクセスや業務アプリケーションの利用など、ビジネスの迅速性を高めることができる。

・リッチコンテンツの利用を促進できる
通信速度と安定性の向上によって、従来の無線LANでは運用しづらかったビデオ会議や動画コンテンツ、音声通話など、コミュニケーションの充実に欠かせない各種メディア(コンテンツ)を円滑に利用できるようになる。

・「いつでも、どこでも」をさらに拡大できる
通信のカバーエリアが広がり、かつ通信品質(帯域)も保たれるので、ノートPCなどの無線LAN対応機器を用いた機動力のあるビジネスを、よりいっそう展開しやすくなる。

・従来の無線LAN対応機器も利用できる
IEEE802.11n は、現在普及しているIEEE802.11gと IEEE802.11aの上位互換となる規格。これまで導入してきた機器は、引き続き利用することが可能だ。

現在市販されているIEEE802.11n対応製品は最大300Mbps(実効速度で100Mbps前後)のものが主流を占めている。このほか、現在策定中の規格として、ギガビットクラスの伝送速度を実現するIEEE802.11ac(6GHz帯)やIEEE802.11ad(60GHz帯)などもある。

 

【コラム】無線LANの高速化を実現する「MIMO」と「マルチユーザーMIMO」
IEEE802.11nでは、MIMO(Multi Input Multi Output)技術を採用することで高速化を実現している。MIMOは1台の端末宛てのデータを複数のアンテナから同一時刻に同一チャネル上で並行して送信し、受信側で各アンテナからの信号を分離する技術。複数の異なる受信パスと送信パスを持ち、2×1から4×4まで、さまざまな異なるトランスミッタとレシーバの組合せを定義できる。802.11nでは、MIMOのマルチパスを利用することで、複数の無線信号を同時に送信することができる。レシーバの各アンテナは受信した信号を独自にデコードし、各信号は他のレシーバの無線からの信号と結合される。その結果、複数のデータストリームが同時に受信され、802.11a/g/bよりもスループットが大幅に向上するというわけだ。

また、IEEE 802.11acでは、さらなる高速化を実現するためにマルチユーザーMIMOの開発が進められている。マルチユーザーMIMOは、複数の端末宛てのデータを、ビームフォーミング技術により電波の指向性を制御し、同一時刻に同一チャネル上で互いに干渉することなく送信できる技術。親機送信側のビームフォーミング制御により、各端末の受信機に他端末宛の無線信号が漏れ込まず、受信側での信号分離処理が不要になる。NTTでは、マルチユーザーMIMOを使って最大伝送速度1.62Gbpsのリアルタイム無線伝送に成功している。

 

企業向け無線LANに必要な機器

パーソナルユースの無線LANでは、アクセスポイント(AP、無線LAN親機)と無線クライアント(無線LANアダプタ、無線LAN子機)を用意すれば十分だが、複数のAPを設置しなければならない企業向け無線LANの場合には、無線LANコントローラや無線LAN管理ソフトも導入する必要がある。ここで、無線LANコントローラとは、複数のAPを一括管理するための装置で、無線LANスイッチとも呼ばれている。APの自動検知やコンフィギュレーション、高速ローミング、隣接するAP間でクライアントのロードバランシングを自動実行する機能、ユーザ認証や不正APの検出などのセキュリティ機能などが搭載されている。

また、小規模オフィス向けとして、APにコントローラ機能を内蔵した製品も提供されており、この場合には導入コストを押さえながら一元管理を実現することが可能だ。これに対し、コントローラと連動して動作するAPは、ソフトウェア更新などの管理が不要な「シン」デバイスとして提供されている。

後編では、企業向け無線LAN製品選びのポイントについて具体的に見ていきたい。

 

【後編】ベンダー選びの決め手となる注目機能

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