クラウドPBXは止まらない――[第4回]PBXメーカーの対抗策とは?<OKI、NEC、日立の取り組み>

通信キャリアの攻勢にPBXメーカーはどのように対抗するのか。オンプレミス型とクラウド型を併用しながら「メーカーならでは」の強みを打ち出すOKI、NEC、日立製作所3 社の戦略を見ていく。

PBX市場が通信キャリアに侵食されるのは、今回が初めてのことではない。PBXメーカーは以前から、通信キャリアに顧客を奪われてきた。

第1のステップはFMCサービスの提供だ。PBXの電話機が携帯電話機に取り換えられ、PBX機器市場は縮小していった。そして今、第2ステップとして、PBX本体が通信キャリアのクラウドPBXサービスによって奪われ始めているのだ。

PBXメーカーもすでにクラウドPBXの提供を始めて対抗策を打ち出している。だが、現段階で各社とも、事業の軸をハードウェア販売からサービスに移行することは不可能だ。

では、PBXメーカーは自社のクラウド型のサービスをどのように位置づけ、活用して通信キャリアの攻勢に対抗するのか。OKI、NEC、日立製作所の順にみていく。

沖ウィンテック――オンプレミスとクラウドを柔軟に切り替え

OKIは2011年11月、他メーカーに先駆けて「EXaaS音声クラウドサービス」(以下、EXaaS)を始めた。「プライベート型」と「共同利用型」(パブリック型)の2方式を用意し、前者はOKIが、後者は沖ウィンテックが提供している。

開始から3年を経て、この11月に共同利用型のサービス内容を見直した。ポイントは次の2点だ。

1つは、「最低利用期間」の縛りをなくしたこと。従来は、3年以内に解約すると違約金が発生していたが、これを撤廃し、いつでも使い始められ、不要になればいつでも止められるようにした。2つ目にポート数(端末や回線の接続数)の下限を500から100に変更し、より小規模な企業でも利用できるようにした。

見直しの背景について、沖ウィンテック・マーケティング本部事業推進部マネージャーの北村睦彦氏は「小規模なお客様からの引き合いが増えている。300ポート程度のお客様が6割くらいを占めている状況だ」と話す。PBX設備の専任管理者を置く余裕がない中小規模の企業が、運用管理をアウトソースできるというクラウドPBXの利点に注目していると考えているのだ。

EXaaSは、まさにこの点を売りにしている。図表に示す通り、沖ウィンテックが24時間365日体制で運用管理・監視を行い、ユーザーからの修理・工事手配や問い合わせに対応する。クラウドというと初期導入費の削減ばかりが注目されるが、「運用管理費という“見えないコスト”を削減できるメリットを強く訴えていきたい」と、マーケティング本部技術部・部長の谷中清広氏は語る。

図表 EXaaS 音声クラウドサービスの運用イメージ
EXaaS 音声クラウドサービスの運用イメージ

ハード型とまったく同じ環境を

谷中氏は、通信キャリアのクラウドPBXとの最大の違いについて「オンプレミス型とまったく変わらない機能を提供すること」と話す。

EXaaSはOKI製PBXとの機能差がなく、使用できる端末や回線も、オンプレミス型で導入する場合と同様にIPとレガシーともにサポートしている。他社のクラウドPBXの多くは使える電話機が数機種しかないが、EXaaSは多機能電話機やアナログ電話機、構内PHSも使用できる。PCやスマートフォンでも内線通話が可能だ(ソフトフォンを使用)。

したがって、従来からOKI製PBXを使ってきた企業は、EXaaSでも使い勝手が変わらない。電話機も社員の部署や働き方によって最適なものが選べる。また、回線も複数キャリアに対応しているため、従来使っていた回線をそのまま引き継げるのだ。

逆に、EXaaSのユーザーが、例えばカスタマイズ機能を追加したいといった理由でオンプレミス型に切り替える場合も、従来の電話環境をそのまま引き継げる。これこそ通信キャリアにはない、PBXメーカーならではの強みと言えそうだ。

月刊テレコミュニケーション2014年12月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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