伊藤忠商事のワークスタイル変革「LyncやYammerを一斉導入したワケ」

「トップが変われば、ここまで変わるのか――。社員はそう実感している」。2013年度に過去最高益を記録するなど、業績好調の伊藤忠商事。その要因の1つに、2010年に就任した岡藤正広社長の強烈なリーダーシップの下、行われてきたワークスタイル変革がある。伊藤忠商事は一体どんな働き方に変わったのか。同社 IT企画部長の渡辺一郎氏が、10月9日に開催された「NTT Communications Forum 2014」で講演した。

伊藤忠商事は、2010年4月の岡藤社長の就任以来、ワークスタイルを変革するため、大きく3つの施策に取り組んできた。まず真っ先に実行したのは、「会議・資料の削減」だったという。

バブル時代の巨額損失への反省から、90年代後半から投資判断のルールが非常に厳格されたという同社。渡辺氏は「社内では10年以上にわたり、アクセルよりブレーキのほうが強く踏まれていた」と振り返ったが、問題だったのは、世界的に景気が回復してからも「ブレーキ時代の名残なのか、守り優先の官僚的な雰囲気が社内には漂っていた」ことだ。

そこで岡藤社長が就任後、こうした官僚的な雰囲気を一掃しようと社内で訴えたのが、「顧客目線の現場主義の徹底」だった。

不要・不急の社内会議はすべて廃止し、もっと現場に出ていくよう社員に求めた。さらに、上司が部下に無駄な資料を作らせないようにすることも徹底したという。「社長への報告についても、『大事な事項を、簡単に箇条書きにして渡せばいい』と。要するに無駄な資料は作らず、『口頭で補足しろ』ということ。加えて、『その場で質問に答えられなくても構わない』とした」

伊藤忠商事が働き方を改革するため実行した3つの取り組み
伊藤忠商事が働き方を改革するため実行した3つの取り組み

2つめの改革も、顧客目線に立ったものだ。伊藤忠商事は10~15時をコアタイムとするフレックスタイム制を導入していたが、2012年10月、育児や介護などの事情を抱える社員を除き、原則9時始業に戻した。

「お客さんが9時前から仕事をしているのに、10時前に来て、どないするんや」――。これが岡藤社長がフレックスタイム制を廃止した理由だ。実際、部署ごとに出社時間を調査してみると、「出社時間が遅い部署ほど、業績がよくないというデータも出てきて、社長の声も説得力を増した」と渡辺氏は語る。

そして3つめの改革が、朝型勤務制度の導入である。20時以降の残業を原則禁止、22時以降の残業を全面禁止にする一方、早朝5~8時までの勤務に対して、深夜勤務と同じ150%の割増賃金を支給するというものだ。8時までに始業した社員には朝食も無料で支給する。

多くのメディアからも注目を集めた伊藤忠商事の朝型勤務制度
多くのメディアからの注目も集めた伊藤忠商事の朝型勤務制度

「『20時以降の残業が禁止されて仕事が回るのか』と最初は我々も不安だったが、終業時間が決まっているので、工夫して効率的に働くことができている」と渡辺氏。早朝の賃金は割り増したものの、時間外勤務手当が7%削減するという効果も出ている。

現在は約3分の1の社員が朝8時までに始業しており、社員からは「家族と過ごす時間が増えた」「趣味の習い事に通い始めた」といったポジティブな声があがっているという。

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