
左からAPAC最高情報セキュリティ責任者(CISO)のジャヤント・デイヴ氏、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ 日本法人社長の佐賀文宣氏
チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズの脅威インテリジェンス部門であるチェック・ポイント・リサーチ(CPR)は2026年7月29日、「AIセキュリティレポート2026」を発表した。
過去1年間に確認したインシデントやテレメトリ、ケーススタディを基に、AIが攻撃側と防御側の双方にもたらす変化を分析した。過去6カ月間に日本の組織が受けたサイバー攻撃は、1組織当たり週平均1737件に達したという。
説明会では、チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ 日本法人社長の佐賀文宣氏と、APAC最高情報セキュリティ責任者(CISO)のジャヤント・デイヴ氏が、調査結果と同社の防御戦略を説明した。
佐賀氏は、生成AIによってサイバー攻撃に必要だった「専門性の希少性」が崩れつつあると指摘した。文章作成やプログラミング、標的の事前調査などをAIが支援することで、少人数でも多数の攻撃を低コストで実行できる。
さらに、攻撃ツールや役割の標準化、分業化、自動化も進む。佐賀氏は、攻撃が一部の専門家から「民主化」されるだけでなく、継続的に攻撃を生み出す「産業化」の段階に入ったとの見方を示した。
侵入からデータ分析まで自律化 悪用までの猶予は数時間に
今回のレポートが示した大きな変化は、AIが攻撃者の「支援役」から、攻撃を自ら進める「実行役」へ移り始めたことである。
外部調査で報告されたメキシコ政府機関への攻撃では、1人の攻撃者がClaude CodeとGPT-4.1を使い分けた。ネットワークへの侵入と探索、盗んだデータの分析、次の攻撃手順の策定をAIに担わせ、34回のセッションで計5317件のコマンドを実行させたという。
攻撃者は、各段階で方針を確認する一方、偵察や認証情報の窃取、データ選別などの実作業をAIエージェントに任せる。完全な無人化には至らなくても、1人が多数の攻撃を並行して動かせるため、攻撃規模は大きく拡大する。
脆弱性が公開されてから、実際の攻撃に悪用されるまでの時間も短くなっている。同社が示した外部調査では、脆弱性公開からエクスプロイト作成までの平均時間は、2023年の約4カ月から2026年には22時間へ縮小した。
特定の脆弱性では、CVE(共通脆弱性識別子)の公開から21分でエクスプロイトが作られた例もあるという。月単位や週単位でパッチを適用する従来の運用では、攻撃に間に合わない可能性が高まっている。
生成AIはソーシャルエンジニアリングにも影響を及ぼす。自然な日本語のフィッシングメールに加え、オンライン会議に偽の上司や同僚を登場させることも可能になった。
AIが生成した顔を専門家が正しく識別できた割合は約41%にとどまるとの調査結果もある。外見や音声だけで本人を確認せず、多要素認証や別経路での本人確認を組み合わせる必要がある。









