【ワイヤレスジャパン】Wi-Fiの「エリアの狭さ」を活かして新ビジネス ―― NTTBP小林社長・基調講演

2013年5月29日、東京ビッグサイトで開幕したワイヤレスジャパン2013では、基調講演のトップでNTTBPの小林忠男社長が同社のWi-Fiプラットフォーム戦略について説明した。

NTTBP代表取締役社長の小林忠男氏

NTTグループは現在、FTTH等の固定ブロードバンド、3G/LTE等の移動通ブロードバンドに続く“第3のアクセス”として公衆無線LANサービスを位置づけ、駅や空港、コンビニといった施設で無料のインターネットサービスを提供している「Wi‐Fiプラットフォーム」を強化している。このWi-Fiプラットフォームの整備、強化を担っているのがNTTBPだ。

小林氏は同社の取り組みを紹介するに当たり、「現在は3番目のステージ」と話した。Wi-Fiで高速なインターネット接続サービスを提供するためのインフラ整備(アクセスポイント(AP)の敷設等)が第1ステージ、それらを使ってモバイルトラフィックのオフロードに対応するのが第2ステージ。そして、現在は、Wi-Fiプラットフォームを活用し、企業顧客に対して付加価値サービスを提供する「Wi-Fiクラウド」事業に注力している。これが3番目のステージとなる。

事業のベースとなるインフラ整備については、すでに全国に12万のAPを設置しており、すべてがIEEE802.11nに対応している。13年度末には16万まで拡張する予定だ。同社のAPは、最大16のSSIDをサポートしており、1台で複数キャリア・事業者に対してインターネット接続サービスを個別に提供できる。NTTBPのAPを借り受けることで「通信キャリアは自前でAPを設置しなくてもよく、”割り勘効果”でコストを安くできる」(小林氏)わけだ。

基盤事業である設備(APとネットワーク)卸事業

特徴として小林氏が強調するのは、APの設置場所だ。他の事業者に先駆けてWiFiインフラの整備を手掛けてきたからこそ、「人の集まるところにAPを持っている」。WiFi対応端末の普及もあり、1日の総リーチ端末数は1億台にも達するという。

この“集客力”を、付加価値サービスと新収益創出に活かそうというのがWi-Fiクラウド事業の狙いだ。これまでNTTBPは無線LANのAPを貸す――つまり、インターネット接続が可能な“土管”を貸す――ビジネスを主軸としてきた。顧客は通信キャリアであり、その目的は高速な無線インターネット接続やトラフィックのオフロードだった。現在はそれに加え、APを設置するエリアオーナーをターゲットとした新ビジネスを展開している。Wi-Fiプラットフォーム上に、顧客であるエリアオーナーごとの専用認証システムやコンテンツ配信システムなどを構築し、より付加価値の高いサービスを提供する。

NTTBPのビジネスモデルの変化

3GやLTEなど無線アクセスを提供するサービスは複数あるが、無線LAN強みは「エリアが狭い」ことにあると小林氏は話した。1つのAPがカバーする「特定のスポット」に来る人に対してピンポイントに情報提供が行える無線LANのメリットを活かしたビジネス事例が続々と増えているという。

実際にこのWi-Fiクラウドを活用している例として、セブン&アイ・ホールディングスが行っている「セブンスポット」がある。コンビニの来店客に対して無料のインターネットサービスを提供するのに加え、電子クーポンやアイドルの壁紙といったコンテンツを配信することに使われている。福岡市も、NTTBPと共同で「Fukuoka City Wi-Fi」と呼ぶサービスを展開中だ。外国人の観光客向けに4か国語対応の専用ポータルサイトを設け、フリーのインターネットサービスとエリア情報の提供などを行っている。2013年3月の月間アクセス数は9万にも上ったという。このほか、東京メトロが提供している情報配信サービス「MANTA(マンタ)」、西武ドームの「Lions Wi-Fi」などでもNTTBPのWi-Fiプラットフォームが活用されている。

Wi-Fiクラウドはセブン&アイHDや福岡市、任天堂などで使われている

小林氏は今後も、Wi-Fiクラウド事業をより拡大していく考え。先行ユーザーで効果が上がるにつれ、「いろいろな業種業態のお客様から引き合いをいただいており、対応しきれないほど」好調という。事業拡大に向けて「業種に合わせてカスタマイズしたサービスを提供していきたい」と講演を締めくくった。

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