ドコモの新規事業戦略を追う(第4回)――M&Aで異業種連携を加速

「総合サービス企業」をビジョンに掲げるNTTドコモは、異業種企業との連携を加速するため、M&A・子会社化を積極推進している。その中心的役割を担っているフロンティアサービス部の取り組みに焦点を当てる。

NTTドコモで新規事業のインキュベーションを担うフロンティアサービス部は、新領域事業8分野のうち、成長ステージにある金融・決済、コマースをはじめ環境・エコロジー、メディカル・ヘルスケア、安心・安全の5分野で事業の立ち上げを行っている。ドコモが力を入れている異業種企業のM&Aもフロンティアサービス部のミッションだ。

成長が期待でき、なおかつドコモのビジネスと相乗効果が得られる事業を見出し、ドコモの顧客基盤やサービスを生かして事業に拡大していくことを基本戦略とする。

ドコモは2009年のテレビ通販「オークローンマーケティング」を皮切りに、有機野菜宅配サービス「らでぃっしゅぼーや」、CD販売「タワーレコード」と異業種の買収・子会社化を積極的に展開している。

もともとフロンティアサービス部は2008年に「提携先やパートナーの事業とドコモのモバイルサービスや基地局、ドコモショップなどのリソースを組み合わせることで、新たなサービスと価値を創造する」という構想のもと、新設された。それから4年余りを経て、ようやく輪郭が見えてきたところだ。

2012年6月にフロンティアサービス部長に就任した執行役員の中山俊樹氏は「大きな目標に向けて前任者がまいてきた種から、いろいろな芽が出始めている。それを大きく育て、刈り取るのが私の役割」と語る。

企業価値の向上も手助け

では、ドコモはこれをどのような形で実現しようとしているのだろうか。例えば、らでぃっしゅぼーやの場合、タブレットを活用することで、紙の会報誌には掲載できなかった数多くの商品アイテムも会員に紹介できるようになるほか、注文内容をタブレットで入力することで、従来の用紙へのマークシート記入と比べて簡便になる。生産者がタブレットを生産性向上や会員向け情報発信などにつなげることも検討中だ。ドコモのプラットフォームやシステムを有効に活用することで、有機野菜宅配事業を飛躍的に成長させ、収益も拡大する展望が開けるのである。

また、健康・医療機器のオムロンヘルスケアとは合弁会社「ドコモ・ヘルスケア」を設立、双方の得意分野を生かしたサービスの早期実現を目指している。

さらに、オークローンマーケティングであればモバイル通販を加えることで、コストを抑えつつ販売を強化することができる。こうした企業価値そのものの向上を手助けする役割もフロンティアサービス部が担っている。

このように提携先の事業へシナジーを発揮するだけでなく、ドコモのサービスそのものに取り込む動きも具体化しつつある。

その一例が、12月開始のdショッピングだ。ここではオークローンマーケティングの通販商品やらでぃっしゅぼーやの有機野菜を取り扱う。また、dショッピングからタワーレコードのオンラインショップへのリンクも用意している。

将来的には、全国に約2400店舗あるドコモショップの活用も視野に入れる。「リアルの店舗との連携は、ネットだけでコマースをしている企業にはできないことであり、大きな差別化になる」と中山氏は大きな期待を寄せる。ドコモショップが、野菜や健康機器も扱う“生活ステーション”へと変貌を遂げる可能性もありそうだ。

月刊テレコミュニケーション2012年12月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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