<特集>Wi-Fiの近未来Wi-Fiセンシングの未来 介護・防犯から全産業に広がるポテンシャル

カメラもウェアラブルデバイスもなく、人間の存在や健康状態を検知する──そんな“近未来”を実現するのがWi-Fiセンシングだ。すでに実用化され、高齢者の見守りなどに活用されているが、今後の進化は。

「プールで泳ぐと全体に波紋が伝わるが、Wi-Fiセンシングでは電波のゆらぎを使って空間全体をセンシングできる」。こうWi-Fiセンシングについて語るのは、ai6(エーアイシックス) 代表取締役 CEOの丸茂正人氏だ。

ai6 代表取締役 CEO 丸茂正人氏

ai6 代表取締役 CEO 丸茂正人氏

同社は米Origin Wireless社の日本法人として2016年に創業し、2022年に商号変更した。Origin Wireless社のWi-Fiセンシング技術を基に、センシングデータのAI解析エンジン開発やそれを活かしたソリューション化に取り組んでいる。

Wi-Fiセンシングの技術的な基礎は、Wi-Fi電波のゆらぎを捉えることにある。電波が飛び交う中を人間が動くと、電波はその影響を受け、伝わり方が変化する。このゆらぎの情報は、Wi-Fi送受信アンテナ間でやりとりされるCSI(Channel State Information:チャネル状態情報)を解析することによって得られる。

原理的には1対のWi-Fi機器があればセンシングが可能だ。空間内の電波を計測するため、計測対象の人間などがWi-Fi機器を持つ必要はない。

特徴の1つに、プライバシー侵害リスクの低さがある。Wi-Fiの電波が届く範囲であれば、カメラを用いずとも人間の存在・不在が分かる。監視カメラにつきものの「見られている」という不快感とは無縁だ。

また、精度の高さも長所で、睡眠時に呼吸する体の微細な動きを検知できるほどだ。これを活かし、睡眠状態のモニタリングがウェアラブルデバイス不要で可能になる。

2025年3月にはIEEE 802.11bfとして、CSIでセンシングするプロトコルが標準規格化される予定だが、それを前にWi-Fiセンシング技術を活用した製品が登場している。

ai6は「Hex Home」の名称で見守りサービスを個人向けに直販しているほか、セントラル警備保障にOEM供給を行っている。2022年には医療介護ビジネスを手掛けるスズケンと資本業務提携し、介護施設で実際に活用されているという。

ai6が提供するリファレンスアプリケーションの画面例。青いグラフが動き、緑のグラフが呼吸の検知を表す

ai6が提供するリファレンスアプリケーションの画面例。青いグラフが動き、緑のグラフが呼吸の検知を表す

Hex Homeは2台の専用デバイスを屋内に設置し、Wi-Fi電波を送受信する。解析結果がスマホアプリで可視化され、異常検知時はブザーを鳴らすこともできる。居室内の在・不在のほか、レム睡眠・ノンレム睡眠といった睡眠状態も把握できる。

Hex Homeは2.4GHz帯と5GHz帯の電波を利用するため、遮蔽物を回り込むことができ、カメラや赤外線センサーで問題になる死角が生じる恐れが少ないことも大きな強みだ。

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