――度重なる不祥事の発覚で損なわれた信頼の回復を掲げて、4月に経営体制を刷新しました。この半年間、どのように取り組んできましたか。
竹下 会社の機能や文化のどこが至らなかったのかを理解し、新しい機能と文化をどのようにして構築するかが、私の大前提のミッションです。着任時に所信表明したのは、継続した成長とガバナンスの両立でした。これを、何年かかってもやり遂げるため、最初の1年でその基盤を作ります。
まずやるべきことは、信用回復です。マーケットとお客様に対して、改善状況と再発防止策の進捗を報告するとともに、成長を止めないというメッセージをお伝えしています。直接またはリモートで会社の状況から再発防止策、どうやってガバナンスを強化していくのかなどまで、かなりの数のお客様と話をしており、現在も続けています。
チームへの貢献を評価する――社員の受け止め方はどうですか。
竹下 ほとんどの社員にとって、一連の不祥事は寝耳に水であり、実直に仕事をしてきた社員ばかりです。社員の家族も含めて大きな心配をかけたので、未来をどう作っていくのかをしっかりと示さなければなりません。
そこで、会社の機能の再編・強化に取り組むと同時に、全社員2600名と対話するリスペクトコミュニケーションチームを立ち上げました。現場の声を聞いて経営側が真摯に反省し、行動と意識を社員と一緒に変えていく取り組みを、今まさに実行しています。
――外部の調査委員会の報告書では、企業文化にも問題点があると指摘されました。
竹下 イノベーティブな提案活動を主体とする攻めの仕事では、ある程度のミスが許容されてしまう、いわゆる“イケイケ”の仕事を称賛するカルチャーが強く根付いていました。
他方で、ミスが許されない守りの仕事は弱かった。送りバントを100回決める人も、絶対にエラーしない人も評価されるべきなのに、「それって、送りバントでしょ?」と、正当に評価しない風潮があったのは確かです。社員の声を本当に聞き取れていなかったことが、そういうところに表れていました。
――再発防止策の1つとして、個人インセンティブ報酬制度の廃止と、チームインセンティブへの移行を決めました。チームに貢献する送りバントも、今後はしっかり評価していくということですね。
竹下 ガバナンス、つまり内部統制もしっかり強化し、常にPDCAを回して社外へオープンにしていきます。
現場からすると今までやっていなかった追加の業務であり、また内部統制という言葉では社員には自分事としてイメージしにくい面もあります。そのため社内では「インナーコントロール」という言葉に言い換えて説明しています。実際に行うことは、社員1人ひとりが自分の業務で発生する可能性があるリスクを回避し、低減し、移転し、保有することです。