「ネットワークの“使われ方”がこれまでとは大きく変わってきており、ネットワークの中心はLANではなくWANに移行している」とアライドテレシスの星秀氏は指摘する。社会全体でリモート化、DXが進展しており、持ち出し用ノートPCやスマートフォンを使って、自宅やサテライトオフィスからクラウド型業務アプリケーションに接続する社員が急増しているためである。
「従来はLANがありゲートウェイがあり、その先にWANがあるという考え方だった。しかし接続端末、接続元、接続先が多様化している今、WANもLANも俯瞰的に見る必要がある。LANの高速化だけではWANがボトルネックになってしまうからだ」
このような新たなフェーズに突入したWANに対して、アライドテレシスは2021年冬、10G対応ルーターの新製品「AT-NFV-APL-GT/AT-NFV-APL-GTX」を発売する。センタールーターに求められる高スループットとスケーラビリティはもちろん、次世代ネットワークを実現する様々な機能が備わる予定だ。
「次世代のルーターはこれまでのような単なるゲートウェイではない。ファイアウォールやSSL-VPNなど複数の機能を提供する傾向にある」
アライドテレシス マーケティング統括本部 Global Product Marketing部 星秀(しゅう)氏
学校に見るWANの高速化 5年後のリプレースを見据えるWANの変化に対応するため、次世代ルーターを必要としているのは企業だけではない。アライドテレシスが注目するのが、GIGAスクール構想で通信ネットワーク環境の整備が進む「学校」だ。既に全国のほぼ全ての小中学校でネットワークの整備が終わりつつあるが、数年後にはリプレースのニーズが現れると星氏は見る。
「LANの整備はかなり進んだが、WANの高速化については見落とされているのではないか。もちろん、まだ10Gbps対応のルーター自体が少なく、そもそもインターネットや閉域網、SINETへ10Gbpsで接続するのが一般的ではない。現状では1Gbpsで十分だろうが、5年も経てば、クラウドアプリケーションの利用増加や、教育コンテンツのリッチ化が進むうえ、生徒側だけでなく校務での利用もますます増えるだろう。そうした時にWAN回線の帯域が課題になってくる」
そこでアライドテレシスが一例として提案するのが図表のような構成だ。学校と教育委員会がそれぞれ10Gbpsでインターネット、SINET、閉域網に接続することを想定している。
図表 文教市場におけるソリューションイメージ(画像クリックで拡大)
学校の教室にはWi-Fi 6対応アクセスポイント(AP)「AT-TQ6602」を設置。スイッチにはマルチギガ対応の上位機種「x530シリーズ」と、コアスイッチ「x950シリーズ」を利用する。
Wi-Fi 6の最大通信速度は9.6Gbps。LANがいくら高速になっても、インターネットや閉域網などに接続する際に、WAN側が10Gbpsに対応していないとボトルネックになってしまう。そこで10G対応ルーターのAT-NFV-APL-GT/AT-NFV-APL-GTXが活躍するというわけだ。