<特集>ローカル5Gのホント病院の窮状、導入の壁 ローカル5Gやるなら「現場を見てほしい」

滋賀県医療情報連携ネットワーク協議会はローカル5Gを使い、県内の中核病院で遠隔診療などの実証を行う。背景には、地方医療現場の窮状がある。ローカル5Gへの期待と現場のリアルな課題を聞いた。

「地方の医療はかなり疲弊している状態だ。5Gを使うことで医療現場の様々な課題が解決できるのではないかと期待している」。滋賀県医療情報連携ネットワーク協議会 常任理事の永田啓氏はローカル5Gへの期待についてこう語る。同協議会は、病院や診療所、薬局、在宅医療介護に関わる機関の間で患者情報を共有するためのプラットフォーム「びわ湖あさがおネット」を展開している。今年10月、総務省が実施する令和2年度の「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」において、「中核病院における5Gと先端技術を融合した遠隔診療等の実現」を請け負うことになった(図表)。

図表 「中核病院における5Gと先端技術を融合した遠隔診療等の実現」の概要

図表 「中核病院における5Gと先端技術を融合した遠隔診療等の実現」の概要

永田氏のいう地方医療の課題には、まず人材不足が挙げられる。

「医者の多くは症例数の多い東京で経験を積みたがる。東京近郊に行くために就職せずに待っている人もいるほどだ。一方、地方の病院は人手不足で、医者が足りずに病棟を閉鎖したり、『ここの病院は産婦人科がない、隣の病院は小児科がない』というように、1人の医者が空いた時間に別の病院に診察に行かないと成り立たない状態だ。このように全てを常勤医師で埋められない状況で、どうやって人をうまく動かすか。電子カルテや検査結果など患者の様々な情報や高精細な画像/映像がどこにいてもリアルタイムにみられるようになれば、効率よく診察などができるようになり、人手の有効活用に繋がる」

滋賀県医療情報連携ネットワーク協議会 常任理事 滋賀医科大学 名誉教授 永田啓氏
滋賀県医療情報連携ネットワーク協議会 常任理事 滋賀医科大学 名誉教授 永田啓氏



だが、そのうえで課題となるのが医療機関の通信環境だ。

「病院の中は非常に特殊な環境。厚さが2メートルもある防火壁や、鉛が入っている壁もあり、ドアを閉めると電波が入らなくなるようなケースが沢山ある。ほとんどの医療機器は有線でつないでいるが、今、医療機関の多くはネットワークに回せる予算がないため、遅いネットワークを使い続けている。もしローカル5Gの工事の手間やコストなどが削減され、簡単に病院の中に入れられるようになれば非常に有効だ。Wi-Fiでは、2.4GHz帯や5GHz帯を使い倒す医療機器と周波数が被ってしまうし、入院患者は携帯電話を使っている。干渉しないローカル5Gの電波が欲しい」

月刊テレコミュニケーション2020年12月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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