5Gで使われる3.7/4.5GHz帯および28GHz帯は直進性が高い。この課題を乗り越え、超高速・大容量通信を広いエリアで実現するには、アンテナや反射板が重要な役割を果たす。
NTTドコモとAGCが共同開発した「窓を基地局化するガラスアンテナ(WAVEATTOCH)」は、建物のガラス窓の屋内側に貼り付けることで、屋外を5Gエリア化する。アンテナには、通常の基地局と同じ無線機とケーブルを接続できる。
「窓を基地局化するガラスアンテナ」は、ガラス窓の屋内側に貼り付けることで屋外を5Gエリア化する
構造としては合わせガラスの製造方法を応用しており、ガラスとガラスの間に透明の樹脂と導電材料をはさみ込み、導電材料に電気を流すことで電波を送受信する。ガラスの中にアンテナ素子を埋め込んだイメージだ。電波が窓ガラスを通過する際に反射や減衰などの影響を受けるが、この影響を調整できる特殊なガラス層を備えた構造になっているという。
ガラスアンテナの設置場所として想定されているのは、渋谷のハチ公前のように、多くの人が滞留するスポットだ。
人混みでは電波が干渉し合いつながりにくくなる場合があるため、周辺の建物の屋上や中層階にアンテナを設置する必要がある。しかし、都市部はすでにアンテナを設置済みの建物が多く、しかもオーナーが景観を重視しているといった理由から、新たなアンテナの設置が難しいケースが少なくない。「ガラスアンテナであれば屋内の視界をさえぎらず、屋外からも目立たない。透明という強みを最大限に発揮することができる」とNTTドコモ 無線アクセスネットワーク部 無線技術担当主査の山田幸司氏は話す。
導入第1弾として今年8月、広島テレビ放送(広島市)の1~3階にある「広島コンベンションホール」の窓に1枚設置され、隣接する屋外イベント通り「エキキターレ」を5Gエリア化した。
ドコモでは広島を皮切りに、都市部の高トラフィックエリアなどで順次展開する計画だ。「ガラスアンテナは、我々の5Gエリア展開における大きな武器の1つ。通常の基地局ではエリア化できない場所に設置していきたい」(山田氏)という。