NTT東日本は2020年1月22日、山梨県小菅村、北都留森林組合、boonboon、さとゆめと共同で、小菅村の山間部で独自のLPWAを使用し「林業従事者の労働災害抑止」「シカ等の獣害対策」の実証実験を行うと発表した。実験は2020年2月中旬から9月末までを予定している。
実験のフィールドとなる小菅村は人口約700人、面積53平方キロメートル、そのうち森林が95%を占める。村を挙げて積極的に地方創生に取り組むほか、温泉向け木質バイオマスボイラーを導入するなど豊富な森林資源を活用した取り組みにも力を入れている。
山梨県小菅村
しかし広大な森林を活用し持続可能な林業を営むには、前述のテーマである「林業従事者の労働災害抑止」「シカ等の獣害対策」を効率的に行う必要がある。
今回の実証実験について小菅村 村長 船木直美氏は「小菅村では獣害対策を1人の若者が担っているが、罠を村内各地に仕掛けて、1日かけて周るような状況だ。その状況をIoTで改善したい。獣害に困っている全国の市町村でも活用できるような結果になれば」と期待を寄せる。
小菅村 村長 船木直美氏
NTT東日本 営業戦略推進室 中西雄大氏は「林業にも地方創生にも力を入れている小菅村で、林業の活性化とまちづくりを掛け算しながらシナジーを生み出していきたい」と述べた。
NTT東日本 営業戦略推進室 中西雄大氏
高出力・メッシュマルチホップの独自LPWA第一次産業の課題解決にIoTを活用するケースはこれまでも多く見られたが、「小菅村のような定住地域から離れた山間部においては、そもそもICTを活用するための通信環境そのものが無いこともある」(中西氏)
山間部には通信環境そのものが無いという課題がある
そこで今回の実験では、山間部でも使える独自のLPWA技術を活用する。特徴は、高出力かつメッシュネットワーク・マルチホップに対応していることだ。
「従来の低出力LPWAは送信出力が20mWのものが多いが、今回、最大送信出力の250mWまで上げることで、山間部による長距離通信を可能にした」(同氏)
今回は中継器3台の最大3ホップまでエリアが拡張できるという。また、メッシュネットワークを構築することで、例えば中継器の1つが壊れてしまった場合でも、迂回ルートを自ら設計して親機にたどり着く。
高出力LPWA、メッシュネットワーク、マルチホップを組み合わせ、
山間部に自営ネットワークを構築する
これにより「中継器4台と親機1台で、52.6平方キロメートルある小菅村全域がカバーできる」(同氏)という。
中継器と親機間は3キロ程度
小菅村に設置された親機
中継器。電源を取れないため、ソラーパネルで充電できるようにしている