IT施策を伴う職場変革を「展開済み/展開中」の企業の割合は、日本を除くアジア太平洋地域(以下、APeJ)では6割に達しているのに対し、日本は33%に留まる。非常に大きなギャップがある――。
IT専門の調査会社IDC Japanは2018年11月15日、「働き方の未来(Future of Work)」の進行状況に関する調査結果を発表した。
比較結果-変革の進行状況
残業時間の削減や労働時間短縮といった、本質的でない部分での取り組みばかりが先行しているなどと批判されることも少なくない日本の働き方改革だが、アジア太平洋地域の各国と比較した結果、ITを活用した改革で大きく遅れを取っていることが明確になった。なお、この調査は、日本を含む13カ国の従業員規模100人以上・売上高10億円以上の企業で、CxOやIT導入に関わる役職者を対象に実施されたものだ(サンプル数は1425)。
IDC Japan PC、携帯端末&クライアントソリューション
グループマネージャーの市川和子氏
記者向けの説明会で分析結果を発表した、PC、携帯端末&クライアントソリューション グループマネージャーの市川和子氏は、「日本は欧米の動向を比較対象にすることが多いが、アジアと比較しても職場変革の遅れが目立っている」と強調。さらに、今後の計画もないと回答した企業が40%にも上ったことを問題視し、「現時点で変革が遅れているうえ、将来的にはさらに水を開けられる懸念がある」とした。
ミレニアル世代の活用、働き方の柔軟性にも遅れ
変革の遅れを示す分析結果は他にもある。
下の表は、デジタルトランスフォーメーションの原動力となる新しい価値観やITスキルを持つ「ミレニアル世代」(30代中盤以下の世代)への対策状況を示したものだ。
比較結果-ミレニアル世代対策
APeJではミレニアル世代の人口比が高いこともあり、「例えば、ダイバーシティを許容した働き方のルールを作ったり、若い世代を積極的にリーダーに登用するなどの取り組みが進んでいる」(市川氏)。対して、労働人口が高齢化している日本では対策が全般的に進んでいないことが明らかとなった。
また、働き方改革を進めるうえでは「働く場所や時間の柔軟性」を高めることも重要だが、この点でも日本企業の取り組みがAPeJに比べて進んでいないことがわかった。特に、サテライトオフィス/コワーキングスペースの設置・活用や、オフィスのフリーアドレス化については、APeJでは30%弱が実施済みであるのに対して日本は10%に留まっており、検討中の企業も大幅に少ない(下の画像参照)。
比較結果-働く場/共創の場之取り組み
では、先端的なテクノロジーの導入・活用状況についてはどうかというと、こちらでもかなりの差をつけられているようだ。