シスコが歩む「運用自動化」の道程――ここまで来たセルフドライビングネットワーク

ネットワークが自らの状態を監視し、自己修復・改善を行う――。シスコは、そんな自律運転型ネットワークの実現を目指している。この“革命”は、ネットワーク運用の現場をどのように変えるのだろうか。

シスコシステムズをはじめとするネットワークベンダーは「インテントベースネットワーク(IBN)」の実現を目指している。

これは、ルーター/スイッチ等をコマンドで操作する運用法を改め、管理者の意図(インテント)を自動的に機器に反映させることで運用を効率化しようというものだ。目指す究極型は、人手を介さずにネットワークそのものが状態異常を認識して自己修復する「セルフドライビング」である。

このIBNはどのようにして実現されるのか。また、現時点でどこまでの自動化が可能なのか。

シスコは7月18日、IBNの中核をなす製品「DNA Center」のアップデートを発表するとともに、これを用いた運用手法等について説明する記者向けイベントを開催した。その内容から、具体的に運用方法がどのように変わるのかについて紹介しよう。

プロセス全体を自動化DNA Centerは、ネットワークの集中制御や可視化を行うSDNコントローラである。管理者がGUI画面で指示を出すと、それを実現するための設定がネットワーク機器へ自動的に行われる。

一方、機器からはテレメトリ情報が送られてくる。DNA Centerはそれを人間にわかりやすい情報に加工して、健全度を示す「ヘルススコア」として表示し、問題が発生した場合には対処法も提示する。シスコが「アシュアランス」と呼ぶ機能だ。

こうして、機器への設定と情報の可視化をともに抽象化することがIBNの基本だ。ネットワークOS/ソフトウェアの更新作業を例に、従来の運用法との違いを確認しよう。

ベンダーが供給する新たなバージョンのOS/ソフトウェアをきちんと適用することは安定運用やセキュリティ対策上重要だが、SDN応用技術室 テクニカルソリューションズ アーキテクトの生田和正氏によれば「実態はなかなか使われていない」という。

理由は「作業が面倒だから」だ。機器の型番を調べ、メモリ空き容量を確認し、更新作業のコマンドを調べる。こうした作業をすべての機器について行って、ようやく「マクロを作って更新作業を自動化できるというのが現在の状況」だ(図表1)。

図表1 イメージ管理による自動化の範囲―SWIM(Software Image Management)
図表1 イメージ管理による自動化の範囲―SWIM(Software Image Management)

DNA Centerを使うとどうなるか。

シスコのWebサイトで新たなソフトウェアが提供される度、DNA Centerはそれを自動的に取り込む。画面上では、脆弱性対策等が行われている安全なバージョンが“Verified”と表示される。管理者はその中から、社内ネットワークに適用したいもの(ゴールドイメージと呼ぶ)を指定する。

すると、予め機器の情報を持っているDNA Centerがそれに違反する機器を表示する。各機器の現状やメモリ空き容量も知っているので、クリックするだけで自動的に更新が行われるというわけだ。

なお、適用後の確認もDNACenterが行ってくれる。

月刊テレコミュニケーション2018年9月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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