ビジネスチャットで「働き方」を変える

ビジネスチャットの導入メリットは、コミュニケーションの活性化だけではない。社員のやる気を引き出したり、無駄な会議や作業からの解放など働き方そのものを変革する可能性を秘めている。

テキストベースのコミュニケーション手段であるチャットは、コンシューマーに続いて法人でも普及が進んでいる。

業務利用に必須のセキュリティ機能や管理機能を備えた法人向けの「ビジネスチャット」が国内で提供されるようになったのは2011年頃だが、導入の勢いが加速し始めたのはここ数年のこと。そのきっかけとして最も多いのが「シャドーIT」対策だ。

「LINE」に代表されるコンシューマー向けチャットサービスを、会社の許可を得ずに無断で業務利用するケースが急増している。しかし、端末の紛失・盗難時の情報漏えいはもとより、悪意を持った従業員がチャットを通じて企業の重要データを社外に拡散するなどのリスクがあることは否定できない。また、個人用のアカウントを業務にも利用することで、会社の監視の目を逃れて深夜や休日に仕事の指示を出したり、飲み会などの私的な会合に部下を誘うといったパワハラやセクハラにつながるやり取りが発生する可能性もある。

その一方、社内のコミュニケーションにもたらすチャットのメリットは決してあなどれない。伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が今年2月に売上規模100億円以上、従業員数200人以上の企業に勤務する役職者を対象に行った調査によると、ビジネスチャットを導入した理由は「スピーディなコミュニケーション」(23.6%)、「会議時間の短縮が期待できる」(15.7%)、「複数人での情報共有が容易になる」(13.9%)などが上位に並んだ。企業のコミュニケーションツールとしてもチャットは無視できない存在となっており、それだけに安全・安心を強化したビジネスチャットの導入に踏み切る企業が増えている。
ミスや業務効率低下の防止もまた、この半年から1年ほどの傾向として、安倍政権が長時間労働の是正などを盛り込んだ「働き方改革」を推進しているのを受けて、自社のワークスタイルを変革するためのツールとしてビジネスチャットを導入する企業も多い。

在宅勤務やノマド(カフェなどさまざまな場所で仕事をする新しいワークスタイル)といったオフィスに縛られない働き方は、従業員同士が顔を合わせる機会が減り、ともすればコミュニケーション不足に陥ってミスを引き起こしたり、業務効率の低下を招く恐れがある。その防止策として、手軽なコミュニケーションを実現するビジネスチャットが活用されている。

本稿では、企業がビジネスチャットを導入する際に重要な選択基準となるセキュリティ/管理機能の動向を紹介したうえで、ビジネスチャットの活用で働き方を変革するような成果を挙げている事例を見ていくことにする。

月刊テレコミュニケーション2017年7月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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