――SaaS/クラウドコンピューティングが企業に与える最も大きな変化とは何でしょうか。
宇陀 一言で言えば、スピードとコスト、そしてクオリティが大きく変わるということです。今までできなかったことが、非常に短期間かつ低コストでできるようになります。
従来のシステムとSaaSとで、なぜスピードが違うのか。それは「簡単に直せる」からです。
今までのITは、いったん作ったものを後で直すにはコストもかかり、非常に大変です。そのため開発も慎重に進めていかざるを得ません。
一方、我々のサービスはすでに百数十万人のお客様に使われており、お客様からの数多くの要求に応えるため、年に3回、これまでの9年間で27回のバージョンアップを繰り返してきました。つまり、大抵の機能はすでに網羅されており、利用開始後に「これが必要だった」となっても、ものの5分で機能を追加できます。
だから「とりあえずここからやろう」という形でスタートできる。そこが最も大きな違いですね。
――企業にとってITがさらに身近なものになりますね。
宇陀 今までは、ITを使って何か新しいことができると思い付いても、システムベンダーに見積りを頼んで、稟議プロセスを踏んで契約して、その後ようやく開発と、数カ月もの期間がかかっていました。負担が大きすぎるために実現できないことも多かったでしょう。
他の分野で、そういったことがあるでしょうか。テレビを見るために電気をどうしようかなと考える人はいません。行きたい場所にもクルマや電車ですぐに行けます。でも、ITではまだ、考えた挙句に止めてしまうということが多い。情報を集めて新しいことを考え、思い付きをすんなりと実行できるようになっていけば、ITをもっとビジネスに活かすことができます。
ITもこれまで、その時代ごとに大きく貢献してきました。しかし、ブロードバンドが普及し、コンシューマーWebの世界で技術が大きく進化したことで、これからの法人のITは、まさにガラっと変わるでしょう。